トランプ政権の通商政策を読む
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
トランプ政権の通商政策が日本に及ぼす影響は?
トランプ政権の通商政策を読む
伊藤元重(東京大学名誉教授)
「貿易戦争はいいことで、勝つのも簡単」。これはトランプ大統領が2018年3月に発信して、話題になったツイートである。同盟国である日本は狙い撃ちにされているのか、1990年代の貿易摩擦が再来するのか。市場は戦々恐々とするが、冷静な現実的対処について、東京大学名誉教授で学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏が、世界を見据えて案内していく。
時間:15分52秒
収録日:2018年5月7日
追加日:2018年6月28日
≪全文≫

●トランプ政権の強圧通商の陰で泣く「マルチ」の世界


 トランプ政権の通商政策が非常に話題を集めていますが、いくつかのポイントに分けてお話ししましょう。

 ドナルド・トランプ氏が最も強く志向しているのは、まさに彼の言う「ディール(取引)」で、相手とテーマを明確にして、先方から譲歩を引き出すことです。通商政策の世界では、これがバイラテラル(2国間)の議論として行われるわけです。

 通商政策が「バイ」と「マルチ」、さらにその中間の仕組みから構成されるのはご存じの通りです。WTO(世界貿易機関)のように多くの国が参加する機関で、世界的な貿易の自由化や通商について多国間が交渉をするのが「マルチ」。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)やNAFTA(北米自由貿易協定)、あるいは日本とEUとの経済連携(EPA)など、多くの国が参加して貿易を自由化していく取り決めも、マルチに近い存在です。

 それに対する「バイ」は、例えばアメリカから見る特定の国(日本、中国、ヨーロッパなど)を対象に相手の譲歩を求めていく形です。

 どちらも大事なのですが、トランプ政権ではバイによって相手の譲歩を引き起こそうとする非常に強い勢いが特徴的ですから、結果的にマルチの世界が失速し始めています。

 WTOはひどい状態で、ほとんど機能低下を引き起こしているのだろうと思います。何かを議論しようとしても、アメリカがこういう動きをしている以上、まったく議論できない状況が続いています。ご存じのように、TPPもアメリカが撤退することによって一時は破綻の危機だったのですが、アメリカを抜いた形でなんとか日本がまとめあげました。

 そういう中で、アメリカは韓国やメキシコ、カナダとも交渉をし直して、自分の有利な方向へシフトしています。ですから、トランプ政権の今やっている貿易政策の「相手に譲歩を求める」こと自体よりも、それによってマルチやWTO、多国間自由貿易協定の流れが崩れ、弱まっていくことが、一番懸念すべきことかもしれません。


●米中「関税戦争」が引き起こした意外な成果


 その上で、アメリカが要求していることを見ると、なかなか悩ましいものです。ただ、アメリカは別に相手に報復をしたいから通商政策を仕掛けてくるのではなく、相手の市場に参入したいから入ってくるのです。今、起きていることの中には、アメリカの圧力が結果的には市場を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
資産運用の思考法…経済や市場の動きをどう読むか
市場予測のポイント…短期・中期・長期の視点と歴史的洞察
養田功一郎
半導体から見る明日の世界(1)世界的な半導体不足と日本の可能性
なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
島田晴雄
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(34)『オデュッセイア』の秘密と愉しみ
【10min解説】大ヒット映画『オデュッセイア』がもっと楽しくなる神話講義
テンミニッツ・アカデミー編集部
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(2)高齢者総合機能評価とフレイル
“マッチョな老衰”はいない!?若い頃からいかに骨格筋肉量を蓄えるかが健康長寿の鍵
小川純人
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
核DNAデータで日本人のルーツを探る…アフリカから日本まで来た行程と時期は?
斎藤成也
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(6)漢字と理性と想像力
漢字と理性と想像力…いま日本人が考えるべきこととは?
橋爪大三郎
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子