トランプ発貿易戦争
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トランプの経済観は一言でいうと「重商主義」
トランプ発貿易戦争(2)トランプ流重商主義
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
追加関税の応酬で激化する米中の貿易問題について解説するシリーズレクチャー。第2話では、そもそもトランプ大統領がどのような経済観、根拠を持って他国の制裁に乗り出しているのかという点を見ていく。そこから浮かび上がるキーワードは、時代を逆行するような「重商主義」だ。(全6話中第2話)
時間:9分33秒
収録日:2018年10月11日
追加日:2018年11月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●選挙での票獲得を狙って貿易を問題化した


 それでは、順を追って、米中の貿易問題を皆さんと考えたいと思います。「トランプ氏は、なぜこういうこと(貿易戦争)を始めたんだ。一体、何を考えているんだ」ということです。

 トランプ氏は、2016年の大統領選挙中から貿易のことを言っています。オハイオやウィスコンシン、ミシガンといった、自動車産業や鉄鋼産業のあるところを「ラストベルト」といいます。鉄がさびてしまったという意味ですが、つまり、あまり仕事がなく、産業がうまくいかないということです。ところが、そこには白人の大変苦しんでいる労働者が山ほどいるわけです。そういう人たちが怒っていることに、トランプ氏は気が付きました。そこで「よし、この人たちの票をもらおう」ということになったのです。

 そこで、トランプ氏はこういうことを言ったのです。「君たちの仕事は日本と中国にだまし取られているんだ。俺が取り返してやる」。英語だとこういう言い方になります。“Your jobs have been ripped off and shipped off to China and Japan. I will get them back to you guys. ”こういうことをずっと言い続けていました。

 大統領になってから1年ぐらいは、減税の話などでいろいろと時間を使ってしまったのですが、2年目になって「よし、やってやるぞ」ということで、ここまでやってきたのです。


●大貿易時代のリーダーだったアメリカが再び重商主義へ


 トランプ氏の経済観は今の経済学の専門家には信じられないものですが、一言でいうと、「重商主義」です。皆さん、重商主義という言葉は知っていますね。これは、16世紀から18世紀に、イギリスやフランスがいわゆる列強になっていった時に持っていた考え方です。つまり、国というのは、他の国にどんどん輸出をしてもうけ、そして、他の国からあまり買わない。そうすると、経済が成長するのだというもので、これが重商主義です。英語では“mercantilism”といいます。

 どういうことになったかというと、帝国主義を育てることになってしまったのです。それで帝国主義のお互いの戦いがどんどん進んできたのですが、実は第二次大戦直前まで、そういう考え方があったのです。ひどかったのは、1920年代~30年代に重商主義的な考え方の下、「自分のところは買わない方がいい。外に輸出した方がいい」ということで関税同盟という関税の壁...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治