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トランプが貿易戦争に絶対に勝ちたい理由

トランプ発貿易戦争(5)貿易戦争に勝ちたい理由

島田晴雄
公立大学法人首都大学東京 理事長
情報・テキスト
“deal”を信念とするトランプ氏だが、彼には貿易戦争を起こしてまで「自分のおかげでアメリカは勝った」と主張したい理由がある。その理由について、アメリカの選挙制度の特徴も踏まえながら解説する。(全6話中第5話)
時間:07:46
収録日:2018/10/11
追加日:2018/11/20
ジャンル:
≪全文≫

●“deal”で勝つ、がトランプの信念


 今までの話のもう1回復習になりますが、トランプ氏は「重商主義」という200年遅れの経済理論を振り回しているわけです。また、彼は1対1の“deal”が好きで、多国間協議が嫌なのです。国際協力というものを嫌っているからです。G20などもそうですが、多国間の協議が入っています。G7も7カ国入っています。そうしたものがあると、最大公約数で「みんなのために一番いいものをつくろう」ということになります。トランプ氏はそれが嫌なのです。「何か決めるなら、俺だけがいいのがいい。“America First”なんだ」と、こういう発想ですから、多国間協議は嫌なのです。

 勝つのにはどうしたらいいかというと、「dealなら勝つ。俺は絶対に勝つ。そのように不動産屋でずっとやってきて、勝ってきたのだから俺は勝つ」となります。今度の貿易摩擦も、こういうことになっているのです。アメリカは、中国から5,000億ドルほど輸入しています。一方、中国は、アメリカから1,300億ドルほどしか輸入していません。お互いに報復関税をかけ合っていくと、中国はもう種切れになってしまうだろうということで、「押し込んでいけば俺が勝つし、だから勝ったんだ」となるわけです。

 これは「勝った」とは言うけれど、そういうことをやっているとはどういうことかというと、中国からアメリカに入ってくる安くていい製品の量が少なくなり、高くなっていくから、労働者が被害者になるのです。物価は上がり、物が足りなくなるからです。でも、トランプ氏は「勝った。俺は勝ったんだ。dealで勝ったんだ」と言うでしょう。これが彼のdealに対する信念です。


●トランプに勝利をもたらしたスイング・ステート


 これは全部、選挙のためにやっています。なぜ選挙のためにそんなに必死になるのでしょうか。

 ロバート・ミュラーという特別検察官がいるのですが、アメリカはさすがに民主主義なので、大統領でも何かおかしなことをすれば、特別な法律の下、そうした独立の検察官が調べることができるのです。今、このミュラー氏がトランプ氏の周辺をずっと追い掛けています。トランプ氏は、2016年の大統領選挙の時にロシアに頼んで、ロシアのサイバーの専門家をアメリカに呼び込んだ、とされています。アメリカ人の名前を使って、アメリカ人になりすまし、WikiLeaksなどに「ヒラリー・クリントンはとんでもない女性だ」というようなことをどんどんどんどん流させた、とされています。これは、相当選挙に影響したはずです。

 これは何だろうと思われた方も多いと思いますが、アメリカの選挙は200年前の制度なのです。当時まだ、選挙民の投票数を正確に数えられなかった時代です。ですから、例えば各州の選挙人をそれぞれ38人とか、55人と決めて、勝った人がそれを全部持っていくという仕組みでになったのです。まだほろ馬車が走っていた時代ですから、そうなのでしょう。今はIT時代ですから、2億人ぐらいなら1時間もあれば全部集計できるので、早くそうすればいいのです。200年前のものを使って、何が民主主義だと、私などは思いますけれど、とにかくそういう制度でやっています。

 「スイング・ステート」というものがあります。たくさんの人口を抱えていて、何かの折に、こちらに入れたりあちらに入れたりする、スイングするステート(州)のことを言う。スイング・ステートは、これまでほとんど民主党の牙城だったのですが、共和党のトランプ氏がその3分の2以上を突き崩してしまい、勝利しました。

 スイング・ステートの票数を全部足すと、クリントン氏はどのぐらい負けたかというと、7万票ほどしか負けていないのです。しかし、全米で見ると、200万票差で勝っているのです。だから全部足せばクリントン氏は必ず勝つはずなのです。世論調査でもクリントン氏が勝っていました。しかし、その7万票で負けているのです。それはなぜかというと、WikiLeaksで「クリントンはあらゆる悪をしている」などと流されていましたが、おそらく100万人以上がその影響を受けていると思います。これは、「ロシアゲート」といわれるロシアの影響でしょう。


●トランプが絶対に選挙に勝ちたいわけ-弾劾回避


 そのことを、じわじわじわじわとミュラー氏が責めています。ミュラー氏は検事ですから、法律が使えるのですが、大統領をどうするかということは、最後は政治決定になります。弾劾がありますが、韓国のパク・クネ前大統領が弾劾によってその地位を追われました。実は、リチャード・ニクソンも弾劾で追われそうになって、自分から辞めました。ビル・クリントン氏は女性問題で弾劾されそうになりましたが、なんだかうまくすり抜けました。トランプ氏も、弾劾される可能性があります。弾劾をやろうと言えるのは下院なのです。下院で多数を取った党が弾劾をや...
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