●NAFTA見直しに目をつけたトランプ
米中は大変なことになっていますが、NAFTAというものがあります。これは、北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement)といいますが、これとWTO(世界貿易機構)の問題を皆さんにご紹介したいと思います。
NAFTA(北米自由貿易協定)はこういうことです。北米というと、一番北にカナダ、真ん中にアメリカ、南にメキシコがあります。アメリカは最大の工業国ですが、さらに世界経済を発展させるために、賃金の安いメキシコ、良質な労働力のいるカナダでつくったものを、部品でも自動車でもアメリカに輸出するときは、ほとんど関税なしということにしたのです。
そうすると何が起きるかというと、アメリカの企業がまずメキシコとカナダに投資するのですが、他にも世界中の企業がメキシコとカナダに投資して、そこでどんどんものをつくり、アメリカ市場に安く入れていき、そうして世界経済が発展したのです。トランプ氏はこれを見て、「私の生涯で見た最悪の協定だ。こんなものはたたきつぶさなければいけない」といった内容のことを、大統領選挙中に発言していました。いざ、大統領になってしばらくはできなかったのですが、とうとう2018年の夏に、「本気でやる」と言い出したのです。
●協定見直しに応じたメキシコ
交渉は3カ国で行います。つまり3カ国協定ですから、なにか行う時は必ず3カ国でやろうというように約束をしていたのです。ところが、カナダがなかなか言うことを聞きません。カナダのジャスティン・トルドー首相は若くてすてきな人で、結構芯が強いのです。トランプ氏は大嫌いのようですが、カナダの意見を全部統合させようとして努力をしています。だから一筋縄ではいかないのです。
トランプ氏は、厄介だなと思ったのでしょう。メキシコの方を向きました。「メキシコとの間には壁を造って、メキシコ人の不法労働を入れない」などと言っていましたが、その時は、メキシコの大統領もなかなかの人で、「壁の建設費など払わない」と拒絶しながら、「アメリカとは合理的な話をしよう」ということを言っていたのです。ところが、メキシコ人の怒りを買ったため、かなり左翼的な人が次のメキシコ大統領に選ばれたのです。2018年12月にメキシコの大統領は替わってしまうのですが、今は「レームダック」といって、それまでの間、今の大統領が地位について...