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大統領への権力集中がアメリカ本来の形?…完全な歴史歪曲

第2次トランプ政権の危険性と本質(6)歪曲された「本来のアメリカ」

柿埜真吾
経済学者/思想史家
概要・テキスト
ヘリテージ財団が打ち出す「単一執行府論」は、大統領に権力を集中させることが「本来のアメリカ」の姿だと謳う。就任以来、歴史的に類を見ない異常な数の大統領令を発出しているトランプ政権を支えるその思想は、「権力の分散」を重要視してきたアメリカの本来の歴史を歪曲している。(全8話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:08
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/14
≪全文≫

●大統領の権限を強める「単一執行府論」


―― それで、そのようなことがなぜできるのかというところで、よくいわれますのが、大統領令です。それこそテンミニッツTVで、曽根泰教先生の講義でお聞きしたこともあるのですけれど、これまでの運用でいうと、実は大統領の権限というのは対議会とか、対司法でいうと「そんなに強いものではないのですよ」というようなことが通説というか、「日本人が思うようなものではないのですよ」ということだったと、私は記憶しているのです。

 この第二次トランプ政権になってから、大統領令をこれだけ乱発して、どんどん進めていってしまうというのは、どういう話になってしまうのですか。

柿埜 これは、このヘリテージ財団の「プロジェクト2025」のいちばんの眼目といっていいような部分なのです。この第二次トランプ政権には、「単一執行府論」という考え方があります。これをこのヘリテージ財団は強く打ち出しているのです。

 大統領というのは、「本来憲法ではすごく強い権限を与えられていたのだ。それがその後間違った連中によって、大統領の権限が縮小されてしまった。けれど、本来はFBIとか軍とか司法省は大統領に直属していて、大統領はどんな役人でも、誰でも罷免できるのだ。大統領が全部を指揮する。だから、大統領にすごい力が集中するのが本来のアメリカの形なのだ」というのが、この考え方なのです。

 実際に、本来のアメリカの憲法の考え方がそうなのかというと、先ほどおっしゃっていただいた通りなのですけれど、全くそんなことはないのです。存在しない過去に復古するという極右的な考え方でありがちな話ですけれど、存在しない理想的な過去を作りだして、そこに復古するみたいなこと等はあるわけです。

 この考え方を強く、ヘリテージ財団やトランプ政権周辺の人たちは打ち出しているというのが、大きな特徴なのです。

―― そもそもアメリカの思想といえば三権分立とか、権力の弊害といいますか、独占はなるべく避けようという思想だったと理解しているのですが、本当はそうであるわけですね。

柿埜 本当はそうだったはずです。この単一執行府論というのは、例えばレーガン政権とかの時代にもいわれたりはしたのですけれど、それはどう考えても、大統領はこれぐらいの権限を持っていたほうがいいよねとい...
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