トランプの経済政策は、文化戦争の手段としての反グローバリズムという軸で理解するしかないが、そのような政策を進めるトランプ政権の政治手法の問題点はなにか。その背景には、陰謀論者が全部入ってしまったような閣僚の問題点や、公約を蔑ろにするトランプの姿勢、さらに、トランプ派の牙城のようになったヘリテージ財団の存在などがあった。(全8話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
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●極めて不合理なトランプの経済政策
柿埜 結局、歴史的に振り返ってみても、理論的に考えてみても、このトランプ政権の政策は極めて不合理で、重商主義者ですら「おいおい、ちょっと待てよ」と、少なくとも良質な重商主義者は「二国間のこれにこだわるって大丈夫か」と言ってくるような、極めて機械的でナンセンスな政策なわけです。
こういうことになってしまっても、こういう関税をかけることをトランプ政権が進めようとするのは、経済合理性とかそのようなことに基づいている、あるいは間違った経済学に基づいているとすらいえません。世界の国にアメリカがいいようにされてきたから復讐するのだということで、だからカナダとメキシコという、本来だったらいちばん親しい国に対してあのようなめちゃくちゃなことをやるわけです。
そういう価値観に基づいてこれをやっていると考えれば、要するに文化戦争の手段としての、反グローバリズムとしての政策として考えれば、これはいちばん理解がしやすいというところなのだと思います。
―― 逆にいうと、そうでもしないと理解ができないということですね。あまりにもとんちんかんなので。
柿埜 そうですね。トランプ政権の関税政策の説明というのは二転三転していて、これは関税を下げさせるためにやっているのだ。いや、アメリカがある程度自給することはいいのだ、いやこれはただの脅しなのだ、いや本当にこれはやらなければいけないのだ、とグルグル、グルグル回っていて、言っていることは一貫していないのです。
でも今のところ向いてる方向性というのは、基本的にはこういう形で経済政策という以上のものがあると考えでもしない限り理解できないというところだと思います。
●公約が二の次になっているトランプ政権
―― そうですね。ちょうどそういうところでいきますと、先ほど優先課題は文化戦争だというような話もあり、それは先ほどお話いただいた通りで、トランプ政権の政治手法です。
この経済政策だけ見ても、非常に危険な部分がありそうに、これまでの経済学の蓄積などが全くすっとんでしまったようなところがあるのではないかと思われるのですけれど、これが果たしてどういうものかというところで、政治の危険性についてぜひご解説をいただければと思います。