アジア政治経済の過去と現在
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ドゥテルテ大統領は果たして「フィリピンのトランプ」か
アジア政治経済の過去と現在(4)ドゥテルテ大統領とは何か
白石隆(熊本県立大学特別栄誉教授)
「フィリピンのトランプ」とも揶揄されるドゥテルテ大統領は、いったいいかなる人物なのか。政策研究大学院大学学長・白石隆氏は、彼の本質は芯からの地方政治家であることだという。フィリピンの地方都市ダバオの治安向上をもたらした彼にとって、喫緊の課題は国内の麻薬取り締まりである。言動の過激さ以上に、彼の政治家としての本質に注目すべきだ。(全6話中第4話)
時間:12分38秒
収録日:2016年9月20日
追加日:2016年11月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●ドゥテルテ大統領の本質は地方政治家出身であること


 ご承知の通り、フィリピンのドゥテルテ大統領が最近では随分と話題になっています。日本でも外国でも、フィリピンのドゥテルテ大統領は「フィリピンのドナルド・トランプだ」といった議論がありますが、私は、あれは全くの間違いだと思っています。というのも、ドゥテルテ大統領にしても、それから(インドネシアの)ジョコ・ウィドド大統領にしても、地方自治体の首長として、かなりしっかりとした業績を上げているからです。

 ダバオは、フィリピンの地方都市の中では最も治安の良い町です。だからこそ、あの地域の経済は本当に活況を呈しているのです。そういう実績の上にドゥテルテ氏は大統領になっています。ですが、もともとは地方政治家ですから、外交・安全保障問題には全く関心がないのです。

 しかもドゥテルテ大統領の場合には、いわゆる麻薬の問題があります。彼の演説を聞いていると、370万人ほど麻薬の中毒になっている人たちがいるということで、フィリピンにとって、これは大変な問題なのだといいます。そして、そのところについては、誰が何と言おうとやると、決めているのです。

 そこでバラク・オバマ大統領が「人権」などと言うと、アメリカ兵がミンダナオでモロ(ミンダナオ島のイスラム教徒)の戦士を殺している100年以上前の写真を持ってきて、「お前らはこういうことをやったじゃないか」と言い返してしまうのです。そういう意味で、ドゥテルテ大統領はトランプ氏とは全く違うタイプで、本当の意味での地方政治家ですから、自分がやりたいことは何かを非常によく分かっています。そこのところはきちんと理解した上でお付き合いすることを考えなければいけないと感じます。

 ドゥテルテ大統領側の人から私が聞いている限りだと、日本の指導者は、安倍晋三総理とも、また岸田文雄外相もお互いに結構うまくいったという感じです。もちろん超法規的にドラッグアディクツ(麻薬中毒者)を殺すことがいいとは決して思いませんが、そうかといって「けしからん」と言っているだけだと、多分反発されて終わりなのでしょう。


●東南アジアの民主化と地方分権化がドゥテルテを生んだ


 そういう人が出てきているのはなぜか。フィリピンの場合には、もう随分前になりますが1986年にコラソン・アキノ氏(通称コリー)が出てきて、いわゆる"People...

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