アジア政治経済の過去と現在
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
中国は2017年が転機!?ニューノーマルを唱える習政権に注目
アジア政治経済の過去と現在(3)中国の動向と注目ポイント
白石隆(公立大学法人熊本県立大学 第3代理事長/国際政治学者)
10年前と比べて、中国の生活水準は大きく向上した。しかし、政策研究大学院大学学長・白石隆氏は、こうした成長によって肥大化した国家意識こそ、今の中国にとっては問題になると述べる。このままの中国では、アメリカのようにはなれないだろう。ただし今後の動向を見る上では、一帯一路の戦略に注意を払う必要がある。(全6話中第3話)
時間:8分25秒
収録日:2016年9月20日
追加日:2016年11月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●成長によって肥大化した、中国の国家意識


 中国は、あれだけの大きい規模を持つ国ですし、それから過去10年間を見ても本当に1.5倍ほど生活水準が上がっています。そうやって、非常に期待が膨らんでいる中で、習近平政権は「ニュー・ノーマル」、新状態と言いながら、中国国民の期待を抑えつつ、できる限り経済成長を続けるといいます。

 ですが、中国は、歴史もあり、かつてはアジアの盟主だったという意識もあります。どんどんどんどん大国になってくると、当然のことながら、「周りの国はうちの言うことを聞いて当然だ」という意識が出てきます。それも一種のナショナリズムです。私はそれが決して健全なナショナリズムだとは思いませんし、健全か不健全かを議論してもしょうがないでしょう。しかし、現にそういうことが起こっているのは間違いありません。このコンビネーションがかなり深刻です。

 何か大きい転換があるとしたら、来年(2017年)の党大会の後でしょう。習近平が非常に強いリーダーとして思い通りの人事をやり、それで2期目に入っていく。そのとき、かなり開明的な戦略的決定を行えば、かなり雰囲気は良くなるでしょう。しかしそうではなく今の方向で行くと、当分は相当難しいということも覚悟してやるしかない、という気がしています。

 客観的にいえば、これは単に経済の規模ではなく科学技術の水準やテクノロジー・インテンシブな産業レベルなどの問題もありますが、経済的な側面から考えると、中国が世界経済の先頭に立つということは、とてもではないですが考えられません。また中国が持っている、世界秩序についての考え方がすんなりと受け入れられるとも思いません。

 軍事的にも、おそらく10年ほどたって2020年代の半ばに入ると、アメリカの国防予算、軍事費の3分の2ぐらいのところまで来ると思います。ただ、それはあくまでお金の話です。実際の軍事力、あるいはアメリカでいわれている「軍事の革命」に対抗できるような軍事力とそのためのシステムをつくれるかというと、それについても私はそうは思いません。

 やや肥大化した、国としての期待の上に国家戦略を組み立てているのではないでしょうか。それに気が付かないと、だんだんといろいろなところで無理が生じ、どこかで社会が劇的に破綻するのか、あるいは徐々に衰退していくのか、どちらになるかは分かりませんが、振り返って...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(6)江戸時代の藩校レベルを分析
史料読解法…江戸時代の「全国の藩校ランキング」を探る
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀