アジア政治経済の過去と現在
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
竹下登政権が短命に終わってアメリカは「当てが外れた」
アジア政治経済の過去と現在(6)90年代日本の栄光と迷走
政治と経済
白石隆(公立大学法人熊本県立大学 第3代理事長/国際政治学者)
日米の安全保障関係において、1990年代は大きな転換期だった。当初描かれていたアジア地域の先導者としての日本の位置は、不良債権処理に象徴される「失われた20年」によって困難になった。政策研究大学院大学学長・白石隆氏によれば、その不良債権処理に苦しめられた竹下・宮澤政権の短命さのインパクトは大きいという。日本、そしてアジア情勢の展望はいかにして開けるのか。(全6話中第6話)
時間:12分47秒
収録日:2016年9月20日
追加日:2016年12月11日
≪全文≫

●日本経済の迷走が、日米関係強化を難しくした


 (アメリカは、)クリントン政権時代、行ったことのいくつかが効いていると思います。一つはやはり財政再建です。ビル・クリントン氏は1993年に大統領になって、財政再建を最初に決めたのですね。ロバート・ルービン氏などが書いているように、これが非常に良いシグナルになり、ルービン氏とアラン・グリーンスパン氏の協調体制ができ、その状態で8年やりました。

 もう一つは、それまで冷戦時代につくっていたさまざまな科学技術を、基本的に民生用として使えるようにしました。これが非常に効果があったということなのでしょう。

 今そういうことに少し関心があってずっと調べていますが、実際問題として、日本は90年代の半ばに1人当たりの国民所得でいうとピークアウトしています。アメリカと日本の経済の規模が一番近くなるのもその頃です。しかし、1998年以降になると中国が出てきて、2006年頃からは中国の方が日本よりも経常収支の黒が大きくなっていきました。明らかに、1980年代から90年代の末までは日本がアメリカの経常収支の赤を埋め合わせしていましたが、7~8年の移行期をおいて、中国がそれをやるようになってきました。そういう動きがあります。

 クリントン政権はそのちょうど最後の時期に当たり、アメリカが日本にまだかなり頼っていた時代です。そのあたり、私は必ずしもルービン氏の見方が正しいとは思っていません。覚えているでしょうか。(1996年に)クリントン・橋本合意(クリントン大統領と橋本龍太郎総理の間で交わされた日米安保共同宣言)があり、それで日米安保の再定義があって、(その前には)日米グローバル・パートナーシップがありました。これで大体冷戦が終わった後の日米関係における、一種の漂流状態に終止符を打ちました。ここから新しい日米関係が始まります。

 外交安全保障では確かにその通りですが、その後、実は迷走します。なぜ迷走するのかというと、結局金融危機などで日本の中も危なくなったからです。それから東アジア経済危機がありました。その中でルービン氏などは「日本も偉そうなことを言っているが、日本の金融市場はめちゃくちゃではないか。さっさと損切りして改革しないと駄目だ」と言って、もう天から馬鹿にし始めます。彼はむしろ朱鎔基氏とすごく親しくなり、「中国はしっかりやっているが、日本は駄目だ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
未来を知るための宇宙開発の歴史(13)発展する宇宙空間利用と進化する技術
最近の話題は宇宙生命学…生命の起源に迫る可能性
川口淳一郎
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子