ロシアのウクライナ侵攻と中国、イラン
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
アメリカを「舐められた獅子」に貶めるロシア、中国、イラン
第2話へ進む
なぜロシアはウクライナに侵攻したか、中国の深謀遠慮とは?
ロシアのウクライナ侵攻と中国、イラン(1)侵攻の背景
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
2022年2月24日、ロシア軍はウクライナへの軍事侵攻を開始した。欧米諸国が警告を発していたにもかかわらず、なぜロシアは侵攻に踏み切ったのか。ロシア、さらに中国やイランなどの思惑に迫る講座シリーズ。第1話では、ロシアの侵攻の背景にどのようなことがあったのか、そして中国の深謀遠慮に迫る。なお、この講座の収録はロシア軍が侵攻する以前の2022年2月15日に行なわれたが、山内昌之氏にウクライナを巡る局地分析にとどまらず、今後の世界を見通す大局を分析いただいた。(全5話中第1話)
時間:13分37秒
収録日:2022年2月15日
追加日:2022年3月13日
≪全文≫

●自由と民主主義を求めるウクライナと、プーチンの危機感


 皆さんこんにちは。昨今、ウクライナ問題がロシアのプーチン大統領との関係で、しばしば話題になっております。

 プーチンはこれまで2008年にグルジア(現在「ジョージア」と呼んでおりますが)、2009年にシリア、2014年にクリミアにおいてそれぞれ武力衝突、あるいは事実上の軍事干渉、さらに占領行為などをいたしました。これはいずれも欧米の虚を突いて、小規模は兵力で成果を収めた(ロシアにとっての)成功体験といってもよろしいかと思います。

 そして2021年の8月にはアメリカ軍のアフガン撤退を実現させた。これも彼らとしては主観的に見れば、1979年のソビエト連邦軍によるアフガン侵攻の長年における失敗と挫折の経験、それを雪辱したという思いがあるかもしれません。

 ところで2008年8月のジョージア侵攻は、ちょうどこの年、2008年4月にNATO(北大西洋条約機構)のブカレスト首脳会議におきまして、ジョージアとウクライナのNATOへの将来的な加盟の見通しを提示したことから、プーチンが刺激され、それに怒ったとされております。プーチン大統領は旧東欧諸国であればいざ知らず、旧ソ連、ソビエト連邦にあった国々、ウクライナやベラルーシなどがかりそめにNATOに入るというようなことになりますと、ロシアそのものの解体にもつながりかねない。そしてロシアの西方への安全保障の外郭的なラインというものが、著しく狭まるということに関して大変危機感を持ったわけであります。

 現在、ウクライナの世論は、公然とウクライナのEU(欧州連合)加盟、それどころかNATO加盟を支持する声が、着実に増えております。そしてウクライナ政府、政権もまた汚職の摘発、あるいは法制度の整備、法の支配の充実といった形で、欧米世界の価値観と共通項、共通の枠組みを作ろうとしております。

 率直に申しまして現在のロシアは、ロシア帝国やソ連の伝統のある部分、すなわち「独裁」と「専制的な支配」というものを継承しているようなところがあります。つまり法の支配や民主的世論というのは、ほとんどないに等しい。こうした(ロシアのような)国の体制ではなくて、やはり欧米、あるいは日本といった国々の、「自由と民主主義を基調とする世論形成・国民の形成」というものを、今、ウクライナは政府も市民も歓迎するということなのです。

 ところ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(6)江戸時代の藩校レベルを分析
史料読解法…江戸時代の「全国の藩校ランキング」を探る
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部