中国共産党と人権問題
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
国家の上に存在する中国共産党はどのような組織なのか
中国共産党と人権問題(2)中国共産党は超法規的存在?
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
習近平総書記率いる中国共産党が一党支配する中国の政治体制は、どのような仕組みで動いているのか。中華人民共和国建国の歴史的背景や、日本における大日本帝国憲法での天皇の規定との比較から、アメリカや日本の政治と大きく異なる中国政治のあり方を理解する。(全6話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分47秒
収録日:2021年10月15日
追加日:2021年12月31日
≪全文≫

●中国共産党はどのような組織なのか


―― ここからは、まず中国共産党のあり方の問題についてお話をお聞きできればと思います。

 先生は本(『中国共産党帝国とウイグル』)の中で非常に興味深いことをお書きになっています。今の中華人民共和国の憲法の前文には中国共産党という位置づけがあるのですが、いわゆる法律の条文にはその共産党を規定しているところがないというご指摘です。これはどういうことを意味しているのでしょうか。

橋爪 中国共産党はあります。あるので当たり前に存在しているような気がしますが、よく考えてみると非常に奇妙です。

 まず共産党は任意団体です。国家は任意団体ではありません。加入の手続きがなく、そこにあることが絶対的で、税金を取られたり選挙権などを与えられたりします。戦争になれば、徴兵されることもあり、そうなると戦争に出ていかなければならないなど、いろいろと抜き差しならない関係があります。そういう意味ではほぼ唯一の団体で、コストが大きいので、例えば「私たちは日本国の日本人です」とか「アメリカ合衆国のアメリカ人です」という意識を持って、毎日生きています。こういう国家はたいていの人には1個しかありません。

 中国共産党の場合、「生まれたら共産党員でした」という人は一人もいません。「共産党に入りたい」と申請を出して、認められたら共産党員になれます。そういう人たちの集まりが共産党です。共産党に入っても、入らなくてもいいのです。入りたい人だけが集まっているのが任意団体です。


●中国共産党は国家の上に存在している


橋爪 さて中国共産党と中華人民共和国の関係ですが、その関係は中華人民共和国憲法には書いてありません。書いてあれば国家機関ですが、書いていなければ国家とは無関係です。したがって、書いていないので国家とは無関係です。

 では本当に無関係な任意団体かというとそんなことはなくて、中国共産党が国務院やその他、政府を指導しています。そして、中国共産党が人民解放軍という政府の軍隊を指揮しています。こういう統帥権や行政監督権といった国家のさまざまな権限を実質的に持っています。

―― 人民解放軍は、中国という国家の軍隊ではなくて、中国共産党が持っている軍隊という位置づけということですね。

橋爪 はい。中華人民共和国ができる前から人民解放軍はいて、当時は八路軍や...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(2)60歳は折り返し地点
「悠々自適」は定年を正当化するための神話にすぎない
出口治明