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実は「中国」は近代になって発明された考え方だった

中国共産党と人権問題(3)歴史の枠を超えた中国化政策

橋爪大三郎
社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授
概要・テキスト
中国共産党はどのような思想のもとで、現在の地位を築いていったのか。また、「中国」という概念はどのように成立していったのか。毛沢東時代の革命と闘争の歴史から、習近平率いる現代まで、中国共産党の歴史とその思想的特徴について考察する。(全6話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:40
収録日:2021/10/15
追加日:2022/01/07
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≪全文≫

●中国共産党が持っていた革命思想


―― (学校などで)民主主義についての授業でも習いますが、ある意味では権力はどうしても暴走します。そうならないように、例えば三権分立で権力を分立させてお互いにチェックを働かせるとか、法律で君主が暴走しないようにチェックをしていく仕組みをつくり上げてきたのが近代国家だと思います。日本もそうです。

 しかし、例えばソ連の共産党やナチスドイツ、あるいは中国共産党のような、いわゆる党が国の上にある全体主義国家では話が少し変わってくるということですね。

橋爪 はい。出来がそもそも違うので、三権分立や議会制民主主義など法の支配は馴染みません。そういうものを超えている別なシステムです。

 例えると、まずナチスはがん細胞で手術するのが大変でした。そして、ソ連もがん細胞で退治するのに70年近くかかりました。ではこれをどう治療するのかというと、放射線治療や化学療法、または外科手術や免疫療法などいろいろあるのかもしれませんが、どうしたら治癒できるかはよく分かりません。

―― それを考えるのに、先生は中国共産党がこれまで歩んできた道を本の中でひも解いています。もともと中国共産党が国よりも上にあることを認められていたのは、「正しい存在」だからです。いわゆる科学的社会主義に基づけば、革命が科学的に正しいものであって、それを分かっているのが共産党なので、その「正しい存在」として指導していくということですね。

橋爪 それは共産主義革命の原則で、共産主義は階級闘争が歴史の本質だと考えます。大多数の人々を抑圧する少数の悪い権力者たちがいます。その人たちは少数なのに支配権を持っていて、国家権力や資本を持ち、人民を抑圧するいろいろな手段があり、それを使って悪いことをやり放題です。人民は、数は多いのですが無権利状態に置かれています。

 これを何とかするには、その人民を代表する革命の主体、「前衛」が必要です。頭が良くて、やる気のある知識人が集まって、任意団体をこしらえて、共産党をつくって、革命を指導します。そして、その団体である共産党が人民の応援のもと国家権力を奪取する、つまり政府を乗っ取ってしまう、そういう考え方です。

 政府を乗っ取るためにはまず団体が存在し、それが政府を乗っ取るという順番です。共産党が政府より上にあるのはそういうことです。これは予定さ...
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