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5Gの協調運転技術によって「信号のない世界」は実現するか

5Gとローカル5G(5)自動運転に関する実証実験

中尾彰宏
東京大学大学院情報学環 教授
情報・テキスト
5Gを活用したアプリケーションについての実証実験としては、低遅延に関わるものもある。その中でも、自動運転の車が苦手としてきた協調運転制御が注目を集めている。この技術によって、「信号のない世界」が実現するかもしれない。(全9話中第5話)
時間:09:17
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/30
タグ:
≪全文≫

●5Gによる自動運転と協調運転


 続いて、もう1つだけ、低遅延のアプリケーションに関する実証実験の例をご紹介します。われわれは、自動運転と協調運転というアプリケーションに取り組んでいます。

 その背景として今日、交通事故や渋滞が、特に合流地点や交差点でよく発生しており、大きな社会問題になっています。この問題を解決するため、安全で効率的な交通システムを作ることが望まれています。いわゆるITS(intelligent transportation system)です。

 皆さんも、自動運転について色々なニュースをお聞きになったことがあると思います。これは、車が内部に備えているカメラとセンサーで、自律的に運転を行うという技術です。この技術の課題は、交差点や合流地点など、車がたくさんいるところでは、お互いに譲り合いが起こり、デッドロックが発生してしまっているということです。

 デッドロックというのはにっちもさっちもいかなくなることなのですが、皆さんがまだ幼少の頃、自転車に乗っていたところ、向こうから同じように自転車でやってきて、お互いに避けようとして最後ぶつかってしまったという経験があったかと思います。自律運転の良くないところは、こうした複数の車が集まる場面で、なんらかの追加的な協調運転が必要となるという点です。

 これに対する1つの解決方法として、次のようなものがあります。ある地域の交通の情報をリアルタイムで収集、分析し、その地域を走行する複数の車に対して制御情報を送信し、協調的な制御を行うというものです。一言でいうと、ここでいう協調とは、車同士の関係を考慮して情報を送信し、制御するということです。交差点や見通しが悪い場所の安全と効率を達成するためには、5Gの低遅延を使い、周辺地域全域の情報を迅速に配信し、協調運転を制御することが必要です。


●協調運転によって「信号のない世界」が実現する?


 これが本当に実現すると、交差点の信号はいらなくなります。

【参考動画】

Rush Hour Black Sheep Films
https://youtu.be/NfSTKSz5SHc

 この映像は、協調運転が実現し、信号のなくなった世界を端的に表したものです。実は、これは協調運転の技術実験ではなく、「クローンエフェクト」というCGの技術を駆使した映像なのですが、これはある方が映像の遊びとして作ったものです。これはわれわれが目指している世界を非常に端的に表わしているので、引用しています。

 これを見ると、少し手に汗を握る映像なっています。しかし低遅延、例えば1ミリセカンドで、通信が制御できるということになると、この映像のような制御が交差点で実現できるかもしれません。これはまだ研究の段階なので、2020年にこの映像のような状況が実現するわけではありません。しかし、こうしたこれまで考えられなかったアプリケーションを、手に入れることができる可能性があります。

 実は、この研究をはじめてから全くの偶然に、2019年6月14日配信の日本経済新聞で、5G基地局に信号機を解放するというニュースが流れました。つまり、全国に20万基ある信号機が2023年度に向けて全国展開し、5G基地局として利用できるようになるということです。こうして5GがITインフラとして交差点に整備され、われわれがやっている研究も進展し実用化されれば、先ほどのような世界を実現できるようになります。


●5G超低遅延通信による協調運転技術


 次に、少し技術的な内容をお話しします。実は、5Gの超低遅延通信は無線部分だけなので、車の制御をクラウドや局舎といった場所から行うとすると、通信遅延に課題が生じます。そこで、いわゆるエッジ型の遠隔制御という方法があります。これは、信号機や合流地点の近くにある基地局、つまり無線通信の終わるところに制御装置を置いて、これによって協調遠隔制御をかけるという方法です。これによって人間が運転しなくても合流がスムーズにいくスマート合流や、信号がなくても車が安全に通過できる信号レス交差点のようなアプリケーションが実現するかもしれません。

 5Gの超低遅延と高速大容量、そして先ほど申し上げたエッジ型遠隔制御(これを一般的には「エッジコンピューティング」といいます)を基地局のすぐそばに置き、低遅延のフィードバックを利用したアプリケーションを用いることによって、情報共有を瞬時に行い、安全性を確保しつつ、多数の車両を制御するという、協調運転システムが提案...
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