●5Gのモバイルネットワークフォーラム
東京大学教授の中尾彰宏です。本日は「5Gとローカル5Gの概要」というテーマでお話させていただきます。
私は現在、東京大学大学院情報学環の副学環長で、東京大学総長補佐をしております。日本には現在、第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)というものがあるのですが、私はそこでネットワーク委員会の委員長も務めています。そこで今回は、5G(第5世代移動通信システム)のネットワークアーキテクチュアを全般的に見ている立場から、皆さんに5Gの概要と、最後の方ではローカル5Gの概要についてお話をしたいと思います。
その他にも肩書きはいくつもあるのですが、総務省関係の、主に情報通信の政策に関わっていますので、そうした立場からも少しお話しします。
それでは最初に、世界で進む5Gモバイルネットワークの研究開発についてお話しします。このスライドは、各国で展開されている、5Gのモバイルネットワークの推進活動(フォーラム)の一覧です。実は日本は後進的で、この5GMFというフォーラムが最後に確立されました。これは2014年のことです。欧州や韓国、中国、アメリカでは5Gを大体2010年前後くらいから推進してきたのですが、その後ようやく、わが国も5GMFをつくりました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに合わせて商業化をするべく、オールジャパンの態勢でこのフォーラムを使い、推進してきました。
5GMFの組織図は、このようになっています。総会では京都大学名誉教授の吉田進先生が会長を務めており、その下にいくつかの委員会があります。私はその中で、ネットワーク委員会の委員長を仰せつかっています。企画委員会、技術委員会、アプリケーション委員会などがあり、最近ではこれらに加えて、シリーズの後半でお話しするローカル5Gにも関わる地域利用推進委員会も設立されました。この他にも、セキュリティ調査研究委員会が設立されています。
わが国において、5Gはこうした体制によって取り組まれているのですが、さらにこのフォーラムには、100社弱の企業が参加されています。その他にも、学術会員や先生方も入っており、全てを併せると150名程度の組織で進めています。
●2021年には、全世界のモバイルユーザーが55億人になる
この5Gは、なぜワールドワイドで推進されていったのでしょうか。きっかけとなったのは、Cisco(シスコシステムズ)が2017年に発表した、ヴィジュアルネットワーキングインデックス(Visual Networking Index)というネットワークについての予測でした。2017年の統計データからなされたこの予測によると、2021年には全世界のモバイルユーザーが55億人になるといいます。
さらに、モバイル対応のデバイスおよび接続数でいうと、2021年には約120億という凄まじい数になるといいます。また、モバイルトラフィック量も、2017年に比べて7倍に増加します。スライドには出ていませんが、月間で大体48EB(エグザバイト)が消費されると予測されています。EBという単位を、おそらく皆さんお聞きになったことがないと思います。これは、TB(テラバイト)のおよそ10の6乗、つまり100万倍です。例えば、今私が使っているラップトップは、約1TBの記憶容量があります。これを100万台合わせたものが1EBということです。2021年には、これが月間で消費されるぐらいのトラフィックが、モバイルネットワークに流れくるということです。
世界には、グーグルやフェイスブック、アマゾン等が使っている「データセンター」と呼ばれる、サーバーが、何万台も置かれている場所があります。そこに集まるトラッフィクは、2017年から2021年にかけて、だいたい3.3倍増えると言われています。
どの程度のデータ量になるかというと、年間で15.3ZB(ゼッタバイト)だそうです。また新しい単位が登場しました。1ZBとは、先ほどのEBの1000倍です。スライドの一番下に、これまでのインターネットにおける大まかなデータ量が書かれていますが、インターネットが誕生してから今までに世界で流れたトラフィックの総量が1ZBであると言われています。つまり、これまでに世界で流れたトラフィック量の15倍近くが、年間でデータセンターに流れていくような世界をわれわれは迎えようとしているのです。
こうした中で、皆さんが持っている携帯電話の通信でも、もう少したくさんの容量が使えるように、変えなければなりません。5Gの推進活動は、こうした動機から始まりました。
●この30年間で最大通信速度は10万倍に
もう少し背景を...