人材の交流を活発にすることと同時に、世界の大学とのグローバルな大学間交流を活発にすることも大切になる。東京大学は藤井総長のもとで大学間の行き来を積極的に行っていて、大学間連携がどんどん強化されているという。では具体的にどのような大学とどのような交流をしているのだろうか。その内容を見ていこう。(全5話中4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
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●中国の大学には大量のリソースが入っている
―― 先生、(2023年11月に)中国・北京を訪問され、北京大学、清華大学をかなりじっくりと見てこられましたね。
藤井 はい、私たち(東京大学)は北京大学、清華大学とは非常に長い間、密接な連携をしてきています。今回も、北京大学で「Beijing Forum」という国際会議が行われる(もう20周年になります)ということで、そこに呼ばれて行ってまいりました。
まず北京大学も清華大学も、特に清華大学に関しては、その規模感と、それから新しいものをどんどんつくっている。そのぶんリソースも投入されていると思うのですが、この「どんどん新しいものをつくっている」という状況に非常に驚いたというのが第一印象です。
―― ものすごくお金をふんだんにかけますよね。
藤井 そうですね。それから、北京大学のほうも、私たちがずっと一緒に行ってきている連携の現場なども見させていただきました。ここはいわゆるカレッジで、学生たちがずっとそこに住んでいて、寮になっているのですが、そこに学びの場もある、という場所です。そこに東京大学の学生も少数ですが何名かが滞在して、一緒にリベラルアーツ教育の学びを進めている。その現場も見てまいりました。
清華大学、北京大学を通して感じたのは、やはりリソースの投下の具合、その規模感が違うというのがまず第1点。例えば、Beijing Forumで話を聞いたのですが、スーパーコンピューティングのファシリティ、それから国内の情報ネットワークの整備について、かなり長期を見据えて、ものすごく資源を投下している。日本の今の感覚でいうと1000倍ほど速い情報通信網の整備の構想まで出ていて、相当に力を入れている。これには驚きました。
今、日本ではおおよそ100ギガビット/秒(per second)、あるいは400ギガビット/秒(per second)という世界ですが、中国では100テラ/秒(per second)など、単位が1000倍違うような通信網の整備がプランとして語られているという状況でした。これにはびっくりしました。
―― 研究者の人数や体制などはいかがでしょうか。
藤井 私たちはよく言うのですが、日本の10倍規模というイメージです。これはもともとそうでした。ただ、一部は政府の資源投下も急激に伸びていたようですけれど、だんだんその伸びは止まってきています。私たちも一緒なのですが、大学自体もい...