●地域から出た利活用アイデアを実証していく活動が行われている
それでは、5Gで何ができるかということについて、少しお話しします。まだ商用サービスは始まっていませんが、これまでの2017年~2019年で、総務省が中心になり、さまざまな実証実験が行われてきました。
まず2017年に実証実験の課題として8つの課題・分野が制定されました。労働力、地場産業、観光、教育、モビリティ、医療・介護、防災・減災、行政サービスという8つの課題分野の中で、大体1~3つほどの実証テーマが設定されています。
特に、2018年~19年には、たくさんの実証実験が行われました。2018年の段階では、都市部を中心とした限られたエリアで実証実験が実施されていましたが、2019年には、地域課題解決型の実証が行われているところが特徴です。
どういうことかというと、例えば5Gを商用化するにあたり、都市部は人口が多いため、サービスとして成り立ちます。5Gを使う人も多いことが予想されるからです。それに対して地域に行くと、人口が少ないため、それが定かではありません。したがって、戦略的には、地域での利用を促進するためのいろいろな実証をしておく必要があるのです。そこで2019年度では、地域から出された利活用アイデアを実証していく活動が行われています。
ここではたくさんの実証実験のテーマが挙げられていますが、各社・大学が中心となって、いろいろなアイデアが出され、5Gの使われ方が探求されています。ではその中でも私が取り組んだ内容を、少し紹介していきたいと思います。
●4K映像のリアルタイム伝送
まず、eMBBの分野での実証実験をご紹介します。大容量通信については、映像系のアプリケーションが多く考えられています。われわれもこれに関する実証研究を2018年6月に報道発表したのですが、KDDIと東大で共同研究が行われました。その結果、5Gを搭載したドローンを用い、4K映像をリアルタイムで伝送することに国内で初めて成功しました。
右下の図を見ていただきたいと思います。4Kカメラと5Gタブレットを搭載して、ドローンを飛翔させています。そして、人や物などの地上にある物体を4Kのカメラで撮影し、5Gタブレットによってその映像を地上にある基地局に向けてデータを送信しました。その結果、4Kの映像が、地上にあるPCやテレビなどに投影されます。
皆さんの中には、ドローンを使ったことがある方も多いかと思いますが、ドローンはカメラを搭載しているので、確認程度の非常に低解像度の映像はスマホで見ることもできます。しかし、高精細なものはSDカードというメモリに蓄積されるので、ドローンの飛翔が終わった後で確認するという使い方になります。それに対して、5Gを使うと、ドローンが飛んでいる間に、地上でリアルタイムに映像の確認ができるのです。こういう使い方が、新しく想定できるようになりました。
この絵でみると簡単なアプリケーションのように見えるのですが、まだ商用化されていない5Gのシステムを使って実際に検証することで、いろいろな課題が抽出されるため、この実験は非常に有用です。
例えば次に、右上の写真を見て頂きたいのですが、ドローンのアンテナが上を向いているのがわかると思います。普通、アンテナは電波を送受信するので、このように上に向いていることは稀です。しかし、ドローンのような物体の場合、アンテナを上に向け、さらにドローンをトラッキングして位置を検出し、その方向に電波を受けなければなりません。
●4Kカメラ映像を張り合わせた360度映像配信の実現
この映像は、6つの魚眼レンズの4Kカメラ映像を張り合わせた、360度の映像配信です。東京大学の柏キャンパスにおいて、予備実験をした時の映像です。このような技術によって、地上においてリアルタイムで送信できると、地上にある物体をモニタリングできるようになります。こういったアプリケーションエリアは一般に、「サーベイランス」と呼ばれています。こうした技術によって、公共安全や警備分野でのアプリケーションが非常に期待されています。
●「サイクリングしまなみ」での5Gドローン4K映像配信
次に、この予備実験を使った実証実験を紹介します。これは、「サイクリングしまなみ」という、広島県の近辺で4年に1度開催されるイベントなのですが、毎年8000人のサイクリストが参加します。そこで、同じように5Gドローンを使い、4Kの映像配信を行うという実験を行いました。この実験は、人がたくさんいる中で、ドローンによってリアルタイム映像...