米中ハイテク覇権戦争
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ファーウェイは本当にアメリカへの深刻な脅威なのか
米中ハイテク覇権戦争(5)5Gと中国脅威論:前編
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
デジタル技術がわれわれの生活を急速に変化させつつある現代社会において、次世代ネットワークである5Gの開発にはファーウェイが大きく貢献している。中国の政治体制を考慮すると、ファーウェイによって開発された技術が、中国という国家の情報収集のために利用されてしまうという懸念が、特にアメリカ国内では大きい。それほどファーウェイという企業は脅威を与えているということだが、はたしてそれはどれくらい妥当性がある話なのか。(全9話中第5話)
時間:6分33秒
収録日:2019年11月20日
追加日:2020年2月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●5Gのための技術の発展にはファーウェイが大きく貢献している


 さて、今はデジタル時代ですね。デジタル時代の安全保障について、中国脅威論が盛んにささやかれています。その理由の1つには、中国は5G技術で先行しているために、大きな米国への脅威になっているということが挙げられます。通信ネットワークと通信機器は、重要な軍事インフラです。軍の戦略配置や、展開、戦闘行為を支えるのは情報です。情報の伝達は軍事活動の軸を支える重要機能であると同時に、敵の置かれた環境や状況を事前に知る、また常に監視する手段、すなわち諜報活動の基礎でもあります。

 5Gは次世代通信を支える技術として、現在の4Gに比べ遙かに高度な機能を持っています。たとえば4Gの10倍といわれる大容量・超高速、そして非常に制度が高くなっている超信頼・低遅延、さらにIoTなどに使われる多数同時接続の技術は100倍となっています。これらの技術が軍事・諜報情報の伝達手段として用いられると、多大な影響が出ます。例えば戦闘でも用いることができ、宇宙も支配できます。

 5Gの研究開発と実装で、現在、ファーウェイが世界をリードしています。これは中国の軍事・諜報活動の世界優位を可能にするという懸念を、米国の軍事・諜報関係者は抱いています。


●中国国家による情報収拾に技術発展が用いられるのではという不安


 中国の体制は、国民がトップに政治的意思決定を全て委託する形になっています。選挙も、野党との国会論戦も、マスコミ批判もありません。したがって、ある意味では非常に効率的です。プライバシーはほとんど無視といいますか、軽視されています。このような状況では、約14億人の国民から取得したビッグデータを、AIによるディープラーニングで分析して、その結果を国家目的に活用することは極めて容易となります。それゆえ、中国の体制はAIと非常に親和性が高いという観測があります。

 こうして構築した国家的な情報収集・分析・操作能力を、仮想敵国への諜報活動に活用することも極めて容易です。

 それから、ファーウェイは実は共産党の支援を受けて、その意向に従う企業だという考え方がアメリカでは一般化しています。例えば、2018年1月に上院の情報委員会の公聴会でFBIのクリストファー・レイ長官が、われわれと同じ価値観を持たない外国政府に対し恩義がある企業や組織が、米国の情報通信ネット...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの
岡本浩
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために
「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(3)カントの公共性論
いま学ぶべきカントの挑戦~なぜ「公開性」が重要なのか
齋藤純一