●対中強硬派の存在感が増大
繰り返しになりますが、トランプ大統領の最大の関心は2020年の大統領選挙での再選です。全ての政策を、そのために実行してきました。米中貿易戦争は、トランプ氏の2016年大統領選における公約の結果です。高い関税をかけて、中国からの輸入を減らすことで、国内産業を活発にして雇用を増やすということです。これは、200年前の重商主義と酷似しています。その公約を達成していることを、示したいのです。
ハイテク戦争では、アメリカは第1位で、世界最強の覇権でなければならない。そのためには中国の覇権の尖兵となっているファーウェイの牙城を切り崩す必要がある。こうした公約を実現して、選挙民の支持を固めることが最優先であり、そのために部分合意などのディールはあるのだという立場です。
これに対して、アメリカには対中強硬派の地盤があります。1980年代以降の中国のめざましい経済発展を見て、中産階級の勃興によって欧米と価値観を共有する可能性が出てきたと、アメリカの人々は考えました。それならば、中国をWTO(世界貿易機関)などに迎えて、世界の仲間に入れようと、十数年前からアメリカは中国に比較的穏健な態度をとってきたのです。
ところが、2012年に発足した習近平体制、さらに2017年に発足した第2次習近平体制によって、そうした期待は完全に裏切られたとアメリカの強硬派は自覚したわけですね。中国は欧米と価値観を共有するどころか、習近平政権下で大国意識をむき出して敵対的になり、国家主導の経済、軍事強化に邁進し始めたと見られ、アメリカにとってこれは非常に危険だと考えられました。アメリカの覇権への脅威と見る政治家、軍部、諜報部門、実業人が増えたのです。
しかし、バラク・オバマ大統領は中国の行動に対して、「戦略的忍耐」といって、特に何かするということがありませんでした。したがって、こうした対中強硬派の意見は前面に出てきませんでした。ところがトランプ政権が誕生して、派手なことを始めたので、何でもありということで、この対中強硬派の存在感が非常に増大してきました。
●アメリカの対中強硬派のさまざまな言説
対中強硬派は、民主党も含む幅広い層を持っています。その中でも注目されたのが、トランプ政権で副大統領を務めるマイケル・リチャード・ペンス氏です。彼は、2018年の10月2日に非常に右寄りのシン...