米中ハイテク覇権戦争
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
米中対立は「トゥキディデスの罠」に陥ってしまうのか
米中ハイテク覇権戦争(8)トゥキディデスの罠と米中対立
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
トゥキディデスの罠という故事を引用し、今日の米中の間の経済覇権争いが実際に戦争に至る可能性が大きいと、島田晴雄氏は警鐘を鳴らす。アメリカとしては中国を世界の仲間に入れようと一肌脱いだにもかかわらず、覇権の獲得を目指して独裁化傾向を強める中国に対して、強い懸念を示している。こうした一連の流れが、今日の深刻な経済対立を生んでいるという意味で、今日の国際関係を見る上で、歴史的な事実から考えることは極めて重要である。(全9話中第8話)
時間:13分05秒
収録日:2019年11月20日
追加日:2020年2月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●トゥキディデスの罠


 ここまでお話ししてきた通り、中国は長期的な戦略で邁進しています。アメリカは自国の覇権、特に技術的な面で覇権を脅かすということで、警戒感を高めています。この米中対立以前にも、覇権をめぐってたびたび戦争が起こっています。これを「トゥキディデスの罠」といいます。ギリシャの歴史学者トゥキディデスが描いた、紀元前5世紀のスパルタとアテネの覇権争いが、ペルポネソス戦争につながり、アテネが勝利しました。このことから「トゥキディデスの罠」とは、覇権をめぐる競争が戦争へと繋がってしまうことを警告しています。

 ハーバード大学のベルファーセンターで、グラハム・アリソン教授を中心に応用歴史学の「トゥキディデスの罠研究プロジェクト」が何年か行われていました。この研究の結果、過去500年間の歴史を詳細に振り返ると、新興国が覇権国を脅かしたケースを16件確認し、そのうち12件で戦争が起きたと報告されています。

 現在、中国が新興勢力として事実上の強力な覇権国であるアメリカを追い上げていることは明白です。トランプ政権はその中国に対して、経済力を減殺すべく高関税を賦課しています。また戦略的に極めて重要な通信インフラの構築で世界をリードしているファーウェイをはじめとする先端ハイテク企業に対して、アメリカ発の部品や技術の輸出禁止措置という制裁を科しており、事実上の戦争状態に近いといえます。この対立が「トゥキディデスの罠」に陥って、本当の戦争に発展するのかという点を、世界は固唾を呑んで注視しています。

 アリソン教授は、覇権国アメリカに強迫観念と警戒感を抱かせる近年の中国の激しい追い上げを詳細に記述していますが、その内容は省略します。


●アメリカの懸念と中国国家の独裁的傾向の高まり


 この中国の急速な台頭の中で、アメリカの経済力が相対的に低下します。覇権の相対的低下に関しても、懸念が始まっていると指摘しています。アリソン教授によると、アメリカ人はなぜか経済の優位はアメリカに不可分の権利で、アメリカのアイデンティティの1つだという認識も、ナイーブなアメリカ人は持っているということです。

 中国がここまで急激に台頭してきたのは、実はアメリカがとってきた中国を仲間に入れる戦略が間違いだったという考えが、今、対中強硬派に広く持たれています。中国の1980年代以降の急速な発展で...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
津崎良典
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎