米中ハイテク覇権戦争
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ファーウェイへの禁輸措置がサプライチェーンに与えた影響
米中ハイテク覇権戦争(2)エンティティリストとその影響
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
エンティティリストに記載という、ファーウェイに対するアメリカの対応は、中国政府側の態度の硬化を招き、より大規模な貿易紛争へと発展していった。ファーウェイは世界のサプライチェーンに大きく貢献していたので、アメリカ政府の対応が世界の経済ネットワークに与えた影響は甚大である。一方でファーウェイは、こうしたアメリカの戦略によるリスクを予見して戦略を立てていたようにも見受けられると島田晴雄氏は指摘する。(全9話中第2話)
時間:9分43秒
収録日:2019年11月20日
追加日:2020年1月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●米中が互いに主導権を握ろうとした結果対立は激化していった


 実はこうした措置の前段階として、以下のような出来事がありました。ファーウェイの孟晩舟副会長が逮捕された後、ドナルド・トランプ大統領は中国に対して、2月末、つまり3月1日まで交渉を延長すると言っていました。トランプ大統領は2月24日に、3月1日以降まで延長して良いという提案をしました。それに伴って、事務方の交渉が進んでいました。これに関して、大変順調に進んでいるとツイッターに書くほど、機嫌が良かったのです。

 ところが、5月10日に突然、中国は9割完成していた合意文書案の7章分を大幅に修正して、一方的に送付してきました。アメリカ政府は対抗措置として、これまでかけていた10パーセントで2000億ドル規模の関税を、25パーセントに引き上げると言明して、直ちに実行しました。

 この文章の大幅な変更には、以下のような顛末があったといわれています。習近平主席の中学時代の同級生で抜群の秀才だった劉鶴(Liu He)副首相が、交渉代表をしています。この人がアメリカの圧力に妥協して、合意した文書がありましたが、習近平主席はこれを見て、こんなものは受け入れられないといって、大幅に加筆修正してしまったのです。これにアメリカ側が大反発をして、突然関税を10パーセントから25パーセントに引き上げて険悪な状況になりました。中国ウォッチャーとして日本で大活躍している朱建栄教授は、この状況を「米中の交渉過程のどんでん返し」と呼んでいます。

 このどんでん返しの直後に、劉鶴副首相がアメリカを訪問して協議しました。しかし、想像されていたように、物別れに終わりました。劉鶴氏はワシントンDCを離れる直前に、記者団に対して、「われわれは3つの原則に関しては絶対譲らない」といいました。その原則とは、1つ目は追加関税の撤廃です。2つ目は貿易購入数量に関して、アメリカが時々恣意的に変えることがあるそうですが、それは認めないということ。最後に、お互いの尊厳を認めて、均衡性のある対等の文書に改善すべき、と主張しました。

 アメリカ側はもともとそうしたことを守る気はないので、こうしたことを劉鶴氏が指摘したということは、中国は最初から交渉に結果を期待していないと考えられます。そして、自分たちのペースに持っていこうという作戦があったのではないかと観測されています。

 この「5...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治