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ファーウェイをめぐる米中対立によって揺れ動く国際秩序

米中ハイテク覇権戦争(1)米中経済対立とファーウェイ

島田晴雄
公立大学法人首都大学東京理事長/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
今日の米中関係は非常に険悪なものとなっている。二国間関係の中心にいるのは、中国の通信機器グローバル企業であるファーウェイだ。軍事的に重要な通信機器に関して非常に強い影響力を持つため、米国は強く警戒しており、ファーウェイ、そして中国に対する規制の動きを強めている。今シリーズでは、ファーウェイをめぐる二国間の争いを題材に現在の米中経済対立の舞台裏を明らかにしていく。今回は、2019年の対立の下地となった2018年の経済対立について見ていく。(全9話中第1話)
時間:09:51
収録日:2019/11/20
追加日:2020/01/11
ジャンル:
≪全文≫

●国際秩序はファーウェイをめぐる米中間の対立によって揺れ動いている


 今回のシリーズは、「米中ハイテク覇権戦争:その経過と展望」というテーマでお話ししたいと思います。

 今ハイテク分野における、米中の摩擦が非常に加速しています。ハイテク覇権国のアメリカを中国の台頭が脅かしているという構図だと考えられます。アメリカは、特に5Gで世界最先端に立つ、中国通信機器グローバル企業のファーウェイ(華為)に対して大変な圧力をかけています。

 通信機器は軍事・諜報にとって大変重要なインフラです。覇権国のアメリカはこの優位を死守したいと考えています。さらに、歴史の研究によると、これまで多くの覇権をめぐる争いがありましたが、その多くが戦争に発展しています。このような前提もあり、世界は今、米中の対立がどのように展開していくのか、注視している状態です。

 国家制度とその根本思想が基本的に異なる米中の間の妥協は、困難ではないかと考えられます。それでは、その対立が解決される可能性はあるのかという点が、われわれの大きな関心事です。今回は事実経過を詳細に振り返って、ハイテク覇権争いの行方とその課題を展望したいと思います。


●ファーウェイ副会長の逮捕劇の舞台裏


 いささか古い話になりますが、2018年12月に、ファーウェイの副会長であった孟晩舟(Meng Wanzhou)氏がカナダの司法当局に逮捕されました。孟氏は、中国では産業界を代表する女性の経営者として大変人気が高く、慕われています。彼女はファーウェイの創業者の子女です。東日本大震災の際にいち早く日本に駆けつけて、数百基の基地局の復旧作業を陣頭指揮したことでも知られています。この逮捕に対して、中国政府はカナダ当局に猛烈に抗議しました。カナダ人の関係者を別件で逮捕するという対抗策に打って出たことで、国際関係は一気に緊張を増しました。

 なぜ、孟氏が逮捕されたのでしょうか。アメリカは、彼女の指導によるイラン向けの禁輸違反を指摘しています。ファーウェイが香港に設立した「スカイコム」というダミー企業がありますが、それを通じてアメリカ企業の通信機器をイランに納入した疑いで逮捕したのです。

 実はこの逮捕の数日前に、ブエノスアイレスで米中首脳会談が行われていました。この米中首脳会談は中国側の要請で開催されたといわれています。中国側はアメリカ製品や農産品を大量に買い付けするのと引き換えに、関税の25パーセントの引き上げ時期をしばらく猶予してほしいという要望を出しました。

 アメリカの回答は、12月から翌年2月末まで90日間執行猶予をするが、その期間に、以下の5項目について合意を形成したいというものでした。その合意が達成できなければ、中国からの輸入品の全てに高率の追加関税をかけるという条件を付けたのです。これは関税第4弾ということで、中国がアメリカに輸出している約5千数百億ドルの輸出品の全てに最終的に関税をかけるということです。

 5項目の内容とは、アメリカから中国に進出する企業に対して技術移転の強要の停止、知的財産権の保護、非関税障壁の撤廃、中国によるサイバー攻撃と情報の窃取の停止、そしてサービスと農業貿易の障がいの除去のことです。

 この交渉が一段落した1週間後に、孟氏の逮捕劇が起きました。つまり、アメリカの司法当局はこの逮捕のために相当周到な準備をしていたということです。しかし、実はドナルド・トランプ大統領には、首脳会談が終わるまで、この逮捕に関して知らされていなかったといわれています。のちにトランプ大統領が解雇したジョン・ボルトン安全保障担当補佐官が、故意にサボタージュをしたのではないかという観測がありますので、アメリカのホワイトハウスは一枚岩ではないのです。

 5項目のうち4項目に関しては、実は2018年に公表されたUSTR(アメリカ合衆国通商代表部)の調査によって、中国は技術移転の強制や知的財産権の侵害を4つの手口で行うということを紹介されていました。アメリカ政府が、中国の知的侵害などを強く警戒し、批判している背景として、人事的な要因が挙げられます。実はトランプ政権は貿易戦略の大統領補佐官として、カリフォルニア大学の教授であったピーター・ナヴァロ氏を起用しましたが、この人は中国批判派なのです。彼の起用が、トランプ政権のその後の中国批判の骨格になっているといえると思います。

 このように、孟氏の逮捕は、カナダという第三国を巻き込んで、事実上普通の状況なら戦争事態といえるような状況に入っていることを示唆しています。


●2018年から米中対立の制度的条件は整えられてきた


 皆さんと今日しっかり考えたいのは、アメリカはなぜファーウェイをここまで敵視して、追及するのかという点です。実はファーウェイだけではありませんが、アメ...
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