●グローバル・ウエストの日本の役割
ある国が今どういう状態にあるのかというのは、やはり歴史に学ぶ必要があり、これは実例で示されたと思います。このグローバル・サウスの国々が非常に力を持ってきたので、既存の勢力、G7などもまさに西側諸国の代表ですが、最近は「グローバル・ウエスト」というそうです。
この勢力と、それから中露の専制権威主義国ですが、これらが自分の陣営に巻き込もうとしていろいろな努力をしています。この巻き込もうとする努力に、グローバル・サウスがどう対応したのかについて、まず見ておきたいと思います。
その1つは、2023年5月に広島でサミットが開かれたことです。G7サミットで、議長国は日本ですから、岸田文雄首相が議長として活躍して世界中を駆け回ってアピールしました。そして1つは、ロシアのウクライナ侵略はG7として断固反対するということで、ゼレンスキーさんが来てくれればいいなと思っていたのですが、最初は来るといわなかったのですけれど、飛んできました。
ただ、このG7の首脳会議の最大の売り物として、グローバル・サウスの国々の代表者を8カ国の国と地域から呼んでいるわけです。この人たちはゼレンスキーさんと初めて会うわけですが、いろいろな共同会議や個別会談もしたようです。この時、非常に印象に残っていることは、これらの国々はロシアの侵略には批判的ですが、ロシアの批判はしないことです。そしてウクライナの支援について、これらの国はとうとう言明しませんでした。
G7も非常に気をつかって、これらのグローバル・サウスの国々が対応できるような問題ばかり議題に選んでいます。それから、グローバル・サウスという言葉はやめようということを、アメリカのブリンケン長官が提案したのです。この会議ではパートナーということで、せいぜいやったことは、法の支配が重要だということを共通に認めましょうということでした。
つまり、ロシアのような一方的な力による変更を認めないということなのですが、これはグローバル・サウスも「それはまあいいだろう」ということで、G7がこれを最大公約数にしたのですけれど、これがグローバル・サウスを迎えようとするG7首脳会議の精一杯の成果でした。その程度なのです。
岸田首相はその後、東南アジアで活躍して、ASEAN、ASEAN+3(日中韓)、ASEA...