グローバル・サウスは世界をどう変えるか
躍進する「グローバル・サウス」77カ国が世界に与える影響
グローバル・サウスは世界をどう変えるか(1)グローバル・サウスの影響力
政治と経済
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
世界の政治・経済をリードしてきたG7を中心とする先進諸国の影響力は徐々に薄れつつある。それに対して、BRICSを筆頭にして「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国・途上国の台頭が目覚ましい。現在、国連によるとグローバル・サウスには77カ国が該当するとされ、およそ世界の3割という規模になる。そこで、世界がさまざまな分野で新次元に突入している今、このグローバル・サウスがどのような影響を世界に及ぼしていくのか。これから10回にわたって考察していく。(全10話中第1話)
時間:10分11秒
収録日:2024年2月14日
追加日:2024年4月3日
収録日:2024年2月14日
追加日:2024年4月3日
≪全文≫
●77のグローバル・サウスの国々
皆さん、こんにちは。島田晴雄です。今日は皆さんと一緒にグローバル・サウス(Global South)は世界をどう変えるか、そして世界が多様化して多極化の時代に向かうと思いますが、そういう時代に日本の戦略はどうすべきなのかということを、皆さんと一緒に考えたいと思います。
グローバル・サウスということに非常に関心が高まっています。国連でだいたいいま大雑把に推計しているようですが、77カ国あるそうです。人口でいうと、世界の人口の6割を超えます。そして(グローバル・サウスの)GDPは今や、G7のGDP総額を上回るという世界に大変影響力を持つ勢力になりつつあるわけです。
日本は1950年代の冒頭から日米安保を基軸にして、安全はアメリカに任せて日本は経済で頑張るという国家戦略で来ているのです。ところが、この過去数十年の間にアメリカ自体が変質してきていて、他方、グローバル・サウスと呼ばれる国々がますます発展して勢力を拡大してきています。そのような新しい世界に入ってくる中で、日本はこれまでのやり方でいいのだろうかということを、ぜひ皆さんと一緒に考えたいというのが今回の趣旨です。
2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻を開始しました。ロシアは最初、軍事施設だけ攻撃するといっていたのが、たちまちそうではなくなり、民間施設とか住宅とか、そして民間人まで殺害を始めたのです。
これはとんでもないと、西側世界が国連で対応しなければいけないということで、安全保障理事会に非難決議をさせようとしたのですが、ロシアは常任理事国ですから、ビート(veto:拒否権)を出してダメになり機能しません。そこで西側諸国が頑張り、国連特別総会で非難決議をしようということになりましたが、1年間で6回の非難決議をやりました。
これがその図で、2022年3月から2023年2月までですが、この中でいろいろやるわけです。2022年4月7日、ロシアに直接影響を持つ人権理事会からロシアを放り出したのです。つまり資格停止です。
それから、2022年11月14日、ロシアのウクライナ侵攻において、ウクライナを救済しろ、あるいは賠償しろということですが、これについては反対の国が急に増え、それに対しての棄権国が大変増えます。これらの国の大部分が、実はグローバル・サウスといわれる国々です。...
●77のグローバル・サウスの国々
皆さん、こんにちは。島田晴雄です。今日は皆さんと一緒にグローバル・サウス(Global South)は世界をどう変えるか、そして世界が多様化して多極化の時代に向かうと思いますが、そういう時代に日本の戦略はどうすべきなのかということを、皆さんと一緒に考えたいと思います。
グローバル・サウスということに非常に関心が高まっています。国連でだいたいいま大雑把に推計しているようですが、77カ国あるそうです。人口でいうと、世界の人口の6割を超えます。そして(グローバル・サウスの)GDPは今や、G7のGDP総額を上回るという世界に大変影響力を持つ勢力になりつつあるわけです。
日本は1950年代の冒頭から日米安保を基軸にして、安全はアメリカに任せて日本は経済で頑張るという国家戦略で来ているのです。ところが、この過去数十年の間にアメリカ自体が変質してきていて、他方、グローバル・サウスと呼ばれる国々がますます発展して勢力を拡大してきています。そのような新しい世界に入ってくる中で、日本はこれまでのやり方でいいのだろうかということを、ぜひ皆さんと一緒に考えたいというのが今回の趣旨です。
2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻を開始しました。ロシアは最初、軍事施設だけ攻撃するといっていたのが、たちまちそうではなくなり、民間施設とか住宅とか、そして民間人まで殺害を始めたのです。
これはとんでもないと、西側世界が国連で対応しなければいけないということで、安全保障理事会に非難決議をさせようとしたのですが、ロシアは常任理事国ですから、ビート(veto:拒否権)を出してダメになり機能しません。そこで西側諸国が頑張り、国連特別総会で非難決議をしようということになりましたが、1年間で6回の非難決議をやりました。
これがその図で、2022年3月から2023年2月までですが、この中でいろいろやるわけです。2022年4月7日、ロシアに直接影響を持つ人権理事会からロシアを放り出したのです。つまり資格停止です。
それから、2022年11月14日、ロシアのウクライナ侵攻において、ウクライナを救済しろ、あるいは賠償しろということですが、これについては反対の国が急に増え、それに対しての棄権国が大変増えます。これらの国の大部分が、実はグローバル・サウスといわれる国々です。...
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