「危機の時代」の気候変動
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
最大100億ドル追加、途上国への支援で注意すべきこと
「危機の時代」の気候変動(4)投資と途上国支援
小原雅博(東京大学名誉教授)
CO2排出削減への努力として柱となるのは、投資と途上国支援である。現段階でCO2排出量の大きいのは途上国であり、これらの国々にCO2排出削減を促すためにはさまざまな支援が必要となる。さらに、もう一つ大きなテーマとして「排出権取引」があり、炭素税といった税制も含め、制度についての議論も進めていく必要がある。(全6話中4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:6分27秒
収録日:2022年2月16日
追加日:2022年4月28日
≪全文≫

●先進国から途上国への支援が必要


小原 CO2排出削減への努力についてですが、鍵となるのが、1つは投資です。これは技術革新にも結び付きます。それから、もう1つが途上国支援です。この2つが柱になってくると思います。

 再生可能エネルギーへの転換にはやはり投資が必要だということで、例えばIEA(国際エネルギー機関)の試算によれば、現在の投資額の3倍ほどが必要だともいわれています。

 それから同時に、途上国支援が必要です。まさに「One for all,All for one」で、皆が協力をしない限りはこのグローバル・イシューに対応できません。そのために先進国と途上国が協力する必要があります。

 ですが、途上国が抱えている課題に先進国がどのように協力していけるかについて、いつも国際会議では1つの焦点になります。つまり、途上国からすれば成長も重要で、このバランスをどのように取ったらいいのだろうかというところで、そこに先進国の協力が必要となるのです。

 今後もCO2の排出については、先進国が減少したとしても、途上国では増大していきます。例えばインドは2070年にネットゼロという目標を出していますが、2040年までに50パーセント増加するとされている。これは欧州が一生懸命削減した分と同じくらいの大きさだろうと言われています。

 そうなると、まずは移行期間ですが、少しでもCO2排出を少なくするという観点からいうと、天然ガスがポイントです。天然ガスは他の化石燃料に比べてCO2の排出量が少ない。こうした転換を行っていかなければいけません。そこでも先進国の支援が必要になってきます。

 例えばCOP26では、先進諸国が2025年までに途上国支援を倍増するよう求めています。これに対して日本政府は、今後5年間で最大100億ドルの追加支援を約束しています。

 こうした途上国に対する支援の中で注意しなければならないのは、途上国が抱えているさまざまな問題です。 途上国自身もそうした支援を効果的、効率的に使うために、スライドに書いてあるような問題(腐敗や行政手続き、投資規制などの途上国の政治リスク)をクリアしていく必要があります。それから、この問題にはどうしても地政学も絡んできます。この点はまた、あとの講義でご説明します。


●国家としての制度整備も重要である



スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
日本の財政と金融問題の現状(1)財政赤字の何が問題か
日本の財政は本当に悪いのか?将来世代と金利の問題に迫る
木下康司
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜