「危機の時代」の気候変動
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
拡大する世界炭素市場、日本が抱える難題とは
「危機の時代」の気候変動(2)CO2排出削減かオフセットか
小原雅博(東京大学名誉教授)
現在CO2排出削減に向けて、各国がさまざまな取り組みを行っている。主なものは、排出枠の取引といった制度、電気自動車への移行、さらに再生可能エネルギーへの転換などだが、世界炭素市場が拡大する中、日本はいくつかの難題を抱えている。そこで今回は、日本の状況と、中国やヨーロッパがどのようにシステムの転換を図り、また成果を上げているのかについて見ていく。(全6話中2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分52秒
収録日:2022年2月16日
追加日:2022年4月14日
≪全文≫

●世界炭素市場の拡大と日本の課題


小原 CO2排出を削減するよう企業も含めて皆が大変努力するわけですが、努力をしても削減しきれないCO2の排出はどうしてもあります。

 こうした、努力をしたけれど排出を止められなかった部分に対し、例えば、排出削減能力の大きい企業や個人がいれば、あるいは国境を越えて別の国にそうした能力があるのであれば、そうした他者との間で取引をする。つまり、自分が排出した分を、他の国や企業がよけいに削減した分で埋め合わせていく。

 排出枠を購入し、それでもって自らの排出分を埋め合わせるという「オフセット」という考え方が今、国際社会で共有されています。日本でも、そうした制度作りが行われてきています。「J-クレジット」は、その典型的なものです。「グリーン電力証書」もそうです。そういった形で「実質CO2排出ゼロを目指そう」ということです。

 このオフセットについては世界的なルールを作っていく必要があるということで、いろいろな話し合いが行われてきました。こうした「世界炭素市場」とでもいうものは大きく広がっていって、数年後には石油市場よりも大きな市場ができ上がるのではないかと予測する人たちもいます。

 このオフセットの精神は、先ほども言ったように、やはり削減努力が前提です。懸命に削減するけれど、それでも排出される分をオフセットしましょうということなので、「削減が主、カーボン取引は従」というものが基本ラインです。この点を見失ってはいけません。

 難しいのは、日本では石炭の比重が非常に大きく、2030年になっても全エネルギーの19パーセントほどを石炭が占めるのではないかと予測されていることです。ここで「脱石炭」への課題が1つあります。

 それから、もう1つは「エンジン車の廃止」です。 エンジン車を一気に廃止することになると、エンジンは非常にたくさんの部品からなっているので、部品メーカーの雇用問題がある。あるいは今、日本はハイブリッドカーが非常に強いのですが、ハイブリッドカーの優位性を維持していく中で、一気に電気自動車に転換することが企業戦略として非常に難しかった背景もあるのです。

 2021年末にトヨタ自動車の豊田章男社長が、「電気自動車を2030年までに350万台販売する」という目標を掲げて、電気自動車への転換を打ち出しまし...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
納富信留
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦