米中戦略的競争時代のアジアと日本
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
コロナ感染症「危機のツケ」が今後の重要なテーマとなる
第2話へ進む
海洋アジアと大陸アジアの対立へ、地政学的舞台が移動
米中戦略的競争時代のアジアと日本(1)多極化する世界と富の分布の変化
白石隆(公立大学法人熊本県立大学 第3代理事長/国際政治学者)
冷戦以後の急速なグローバル化により、国際社会のパワーバランスも変化しつつある。中国の台頭や、アジアの中規模国の急速な成長により、先進国と新興国の割合も変化しており、地政学的舞台はすでに欧州からアジアへと移行している。(全7話中第1話)
(2021年11月24日開催島田塾講演「米中戦略的競争時代のアジアと日本」より)
時間:15分47秒
収録日:2021年11月24日
追加日:2022年2月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●グローバル化の中で新興国の割合が倍に


 今、ご紹介にあずかりました白石です。今日は「米中戦略的競争時代のアジアと日本」というテーマでお話ししたいと思います。

 これはある意味で私自身の癖でもあるのですが、非常にマクロ的に世界を見たとき、少なくとも冷戦終焉以降、あるいは21世紀に入って、いわゆるグローバル化の時代の中で何が起こっているか、一言でいうと「多極化」だと思います。多極化という言葉自体に私は少し不満があるのですが、もう少しフワッとした言い方をすると、「富と力の分布が急速に大きく変わっている」ということで、その結果、先進国と新興国が出てきています。

 これについてどういうことかをまずお話しします。少し資料が見えにくいかもしれませんが、申し上げたいことは極めて単純です。1990年ないし2000年と、2019年を比べると、非常にはっきりした違いが3つあります。1つは20世紀、つまり1990年にも、また2000年にも先進国が世界経済のだいたい80パーセントを占めていました。また、2000年までは「新興国」という言葉はなく、2001年から使われ始めました。20世紀の最後の頃では、途上国は20パーセントぐらいしか占めていませんでした。それが2019年になると、だいたい先進国が60パーセント、途上国・新興国が40パーセントになります。これだけシェアが動いたということが1つです。

 2つ目ですが、“N.America”は北米のことで、北米とEU地域を合わせると、1990年、また2000年にも世界のシェアのだいたい60パーセントを占めています。それが2019年になると50パーセントを切っていきます。代わりにどこが伸びたかというと、最近の言葉でいうところの「インド太平洋」です。

 それから3つ目ですが、インド太平洋の中では、日本は1990年、また2000年にもそれ以外のインド太平洋の国々を全部合わせたよりも大きかったのです。しかし、2019年には中国が、日本も含めたそれ以外の経済全部合わせたものと同じぐらいの規模になっています。この3つとも、皆さんは非常によくご存じのことだと思います。


●変わりつつある国際社会のパワーバランス


 その結果、何が起こっているか。この表は、経済規模の大きいほうからトップ20の国を選んだものです。2000年にはまだ上から5つは全部いわゆる先進国のG...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典