米中戦略的競争時代のアジアと日本
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ASEAN+のプロセスが打ち止めに!? 日本にとって重要な国は
米中戦略的競争時代のアジアと日本(6)ASEANの漂流と日本の大戦略
白石隆(公立大学法人熊本県立大学 第3代理事長/国際政治学者)
1967年の「バンコク宣言」で設立されたASEANは、中国の介入や、ミャンマーの政治的混乱など多くの問題に直面し、統一性に揺らぎが生じている。米中覇権争いが激化する中、その狭間で揺れる日本は今後どんな姿勢でのぞむべきなのか。(全7話中第6話)
(2021年11月24日開催島田塾講演「米中戦略的競争時代の アジアと日本」より)
時間:11分15秒
収録日:2021年11月24日
追加日:2022年3月16日
カテゴリー:
≪全文≫

●中国の介入により揺らぎ始めたASEANの統一性


 次に東南アジアです。大きくいうと、3つあると思います。1つは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の漂流です。その意味とは、中心性が揺らいで、統一性を失ったということです。

 この理由は単純です。もうずいぶん前の話ですが、1997年から1998年に東アジア経済危機がありました。その時にアメリカのクリントン政権は、非常に露骨に、危機に陥った国に介入しました。例えばマレーシアにおいては、マハティール氏をとにかく辞めさせることが改革だという立場を取りました。また、インドネシアについては、スハルト氏が辞めることが改革だという立場を取りました。そうやって口を出した一方、例えばタイには一銭もお金は出しませんでした。それに対する反発が非常に強くて、その中でいわゆる「東アジア」という言葉が重要になりました。そして、ASEAN+3やASEAN+6が生まれました。これはのちにASEAN+8になって、いわゆる「東アジア首脳会議」となります。

 こういうものは全部2000年代にできるのですが、2010年くらいからだんだんとASEAN+のプロセスが、中国にとって使い勝手が悪くなってきます。特に南シナ海での領有権問題で、アメリカや日本、オーストラリアがいる場で批判されるのを非常に不愉快に思うようになります。結局、2012年にASEANのプロセスに介入して、ASEAN+のプロセスがあまり対中批判できないようにしてしまいます。

 同時にASEANの国々から見ると、南シナ海で領有権問題を持っている国と持っていない国では、当然のことながら利益が違うので、そこでも対応が違ってきます。こういうことが理由になって、だいたい2010年代に、次第にASEANは統一性が失われ、ASEAN中心の地域協力のプロセスもうまく機能しなくなっていきます。

 まず、インドが抜けたので、ASEAN+5になりました。(2022年)1月に「RCEP(地域的な包括的経済連携)」という広域の経済自由貿易協定が発効します。私自身は、もうこれでASEAN+のプロセスは打ち止めになると考えています。


●ASEAN諸国の政治的特徴と今後の動向


 ASEANがASEANとしての地域協力の枠組みにならなくなったら何が起こるかというと、当然のことながらそれぞれの国が重要になります。日本から見ると一番重要なのは、南シナ海の安全、安定に非常に重要なベトナム、フィリ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦