米中戦略的競争時代のアジアと日本
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ASEAN+のプロセスが打ち止めに!? 日本にとって重要な国は
米中戦略的競争時代のアジアと日本(6)ASEANの漂流と日本の大戦略
白石隆(公立大学法人熊本県立大学 第3代理事長/国際政治学者)
1967年の「バンコク宣言」で設立されたASEANは、中国の介入や、ミャンマーの政治的混乱など多くの問題に直面し、統一性に揺らぎが生じている。米中覇権争いが激化する中、その狭間で揺れる日本は今後どんな姿勢でのぞむべきなのか。(全7話中第6話)
(2021年11月24日開催島田塾講演「米中戦略的競争時代の アジアと日本」より)
時間:11分15秒
収録日:2021年11月24日
追加日:2022年3月16日
カテゴリー:
≪全文≫

●中国の介入により揺らぎ始めたASEANの統一性


 次に東南アジアです。大きくいうと、3つあると思います。1つは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の漂流です。その意味とは、中心性が揺らいで、統一性を失ったということです。

 この理由は単純です。もうずいぶん前の話ですが、1997年から1998年に東アジア経済危機がありました。その時にアメリカのクリントン政権は、非常に露骨に、危機に陥った国に介入しました。例えばマレーシアにおいては、マハティール氏をとにかく辞めさせることが改革だという立場を取りました。また、インドネシアについては、スハルト氏が辞めることが改革だという立場を取りました。そうやって口を出した一方、例えばタイには一銭もお金は出しませんでした。それに対する反発が非常に強くて、その中でいわゆる「東アジア」という言葉が重要になりました。そして、ASEAN+3やASEAN+6が生まれました。これはのちにASEAN+8になって、いわゆる「東アジア首脳会議」となります。

 こういうものは全部2000年代にできるのですが、2010年くらいからだんだんとASEAN+のプロセスが、中国にとって使い勝手が悪くなってきます。特に南シナ海での領有権問題で、アメリカや日本、オーストラリアがいる場で批判されるのを非常に不愉快に思うようになります。結局、2012年にASEANのプロセスに介入して、ASEAN+のプロセスがあまり対中批判できないようにしてしまいます。

 同時にASEANの国々から見ると、南シナ海で領有権問題を持っている国と持っていない国では、当然のことながら利益が違うので、そこでも対応が違ってきます。こういうことが理由になって、だいたい2010年代に、次第にASEANは統一性が失われ、ASEAN中心の地域協力のプロセスもうまく機能しなくなっていきます。

 まず、インドが抜けたので、ASEAN+5になりました。(2022年)1月に「RCEP(地域的な包括的経済連携)」という広域の経済自由貿易協定が発効します。私自身は、もうこれでASEAN+のプロセスは打ち止めになると考えています。


●ASEAN諸国の政治的特徴と今後の動向


 ASEANがASEANとしての地域協力の枠組みにならなくなったら何が起こるかというと、当然のことながらそれぞれの国が重要になります。日本から見ると一番重要なのは、南シナ海の安全、安定に非常に重要なベトナム、フィリ...

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