例えば、本1冊を1分でスキャニング。例えば、時速100キロメートルで走行中の車から、壁にある0.2ミリメートルのクラックを見つける。東京大学大学院情報理工学系研究科教授・石川正俊氏が産業分野、医療分野での超高速画像処理の活用について語る。(全7話中第5話)
※テキストの文中に参考動画(YouTube)へのリンクがありますので、併せてご覧ください。
≪全文≫
●トンネルや工場での検査に画期的利便性
次は、高速の画像処理の産業応用と医療応用についてお話をしたいと思います。まずは産業応用です。高速の画像処理で検査をしようということです。高速の画像は、高速に動いているものからの検査、あるいは、高速に動いているものに対する検査には、強力な武器を提供することができます。
まず、最初の応用は、トンネルの壁の検査です。トンネルの壁の検査は、通常、打音検査などいろいろな検査を年に1回程度でやっています。しかし、それでは頻度が低すぎるということで、残念ながら打音検査まではできないけれども、目視検査に関しては高い頻度で検査をしたいということで、高速に走行する自動車から壁のクラックを検出することを研究としてやっています。
今、およそ時速100キロメートルの車からトンネル壁面の0.2ミリメートルのクラックが見えるようになってきました。これは、特殊なやり方をしてそれを見えるようにしています。こういったものが実現されると、高速道路に規制をかけて通行止めにすることなく、通常の走行車両の中からトンネルの壁面の検査ができるようになると、大いに期待されています。
また、トンネルでなく通常の工場の中でも、高速移動している物体を移動途中で形状検査をしていきます。それを1000分の1秒でやると、多くのものが検査できるようになります。例えば、1000個の対象がずっと流れているものであっても、われわれの開発した技術では、1000個の対象を1000分の1秒ごとにトラッキングすることが可能です。つまり、1000分の1秒ごとに1000個の対象の形状の検査は終わります。ですから、部品が多く、小さな部品が多く流れるような場面でも、その流れを止めることなく、流れの中で検査ができます。
●本1冊をわずか1分で電子化することが可能
また同時に、構造証明という形状の計測ができます。こちらからあるパターンを照射して、そのパターンがカメラにどのように映ったかを、1000分の1秒ごとに解析することで形状を取得することができます。1000分の1秒で3次元の形状が取得できますので、1000分の1秒での3次元形状の検査もできますし、その形状を使っていろいろな操作もできるようになります。
その一つの例が、高速の本のスキャンです。本をパラパラとめくるだけでスキャンが終わる、つまり、電子化が終わるという装置で...