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5Gと水中ドローンによる漁場での遠隔監視の実証実験に成功

5Gとローカル5G(9)水中ドローンの遠隔操作

中尾彰宏
東京大学大学院情報学環 教授
情報・テキスト
東京大学中尾研究室は、NTTドコモとの共同研究の結果、5Gと水中ドローンを利用した漁場での遠隔監視の実証実験に成功した。これにより、牡蛎(カキ)の養殖をはじめとする漁業従事者の大きな負担を軽減することが期待されている。(全9話中第9話)
時間:09:18
収録日:2019/12/04
追加日:2020/01/27
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≪全文≫

●5Gを使った新しい実証実験に成功


 それでは、NTTドコモと東京大学中尾研究室が共同研究として取り組んでいる、5Gの実証実験のお話をさせていただきます。2019年11月に報道発表した案件なのですが、この度、5Gと水中ドローンを利用した漁場の遠隔監視の実証実験に成功しました。

 この取り組みは、水産業界における労働者の負担削減を目指すものです。具体的には、広島県江田島市にある江田島湾で牡蛎(カキ)の養殖をしている、漁業従事者の方々のところにお邪魔した時のことです。

 カキの養殖では、専用の筏を海の上に浮かべ、そこにカキをたくさんロープで吊るし、養殖をします。漁業に従事されている方は、毎回ボートを使って、実際にカキがどのように育っているかを見に行きます。しかし、こうした作業は、労働力不足と高齢化という観点からみても、大変な負担になっています。そこで、カキの養殖の進捗を、水中ドローンを使って遠隔で監視できれば良いのではないかということで、今回の取り組みが進められました。


●大容量通信だけでなく低遅延性を用いているところに特徴がある


 5Gの性能のなかでも、大容量通信と低遅延性を使いました。水中ドローンで撮った映像を5Gで伝送し、漁業従事者が陸地で水中ドローンを操作しながら、その様子を確認するという実証実験です。

 普通の5Gの実証実験と少し異なるのは、今回の場合、大容量の通信である映像をリアルタイムで配信するだけではなく、水中ドローンを実際に遠隔で操作するという点です。この操作は低遅延でないとうまくいきません。この実証実験は、大容量通信と低遅延通信という両方の性質を使ったユースケースであり、注目を集めています。


●5Gによってタイムラグのない水中ドローンの操縦が可能に


 具体的な実証実験の仕組みを、上のスライドに示しました。エリクソン製の基地局とインテル製の移動局を使いました。インテル製の移動局はボートの上に乗っており、そこで水中ドローンと有線がつながれています。水中ドローンは、遠隔で5G通信越しに操作をされるのですが、同時にカキの養殖の様子を水中で捉えた映像が、同じように5Gの無線通信で陸地に送られます。

 ポイントを赤字で示しました。水中ドローンのカメラで撮影した海中の映像を、陸上の5G基地局に向けて無線伝送をしつつ、並行してタイムラグのない水中ドローンの操縦信号を5G基地局から5G移動局に向けて無線伝送するというものです。

 実際は28GHzのミリ波帯を使うので、非常に広帯域の伝送が実現できるのですが、今回の実験は、船舶をカキ養殖場の筏設置場所に合わせ、基地局から100~150メートルの範囲に停泊をさせて伝送を行いました。


●鮮明な画像の撮影に成功


 これが水中ドローンからの実際の映像です。5Gの通信を通して、吊るされているカキがリアルタイムで伝送されている様子が、画面キャプチャーで表示されています。非常に綺麗で鮮明な映像が伝送されていることが分かります。また、操作者はタイムラグなく水中ドローンを操作することができました。われわれは、広島に行って約1週間この実験を行ったのですが、たまたま天気が良く、かなり良い映像が撮れました。関係者一同、非常に感動しました。


●2020年3月以降、一般の利用も可能に


 上のスライドは、実験が実際にどのような場所で行われたのかを4枚の写真で示したものです。陸地からカキ筏までの距離は、数百メートルあるのですが、そこに5Gの通信基地局を持っていきました。この実験は、実験局免許を取得して行っているのですが、2020年3月以降は、5Gの公衆網が整備されることによって、自由にユースケースを使えるようになることが期待されています。

 ただ、実際に実験してみると、船の上であるため波が高く、5Gのアンテナが上下に揺れるという問題がありました。しかし、こうした状況があっても、NTTドコモとの5Gの実験では、しっかりと5Gの伝送が行われることが確かめられました。

 左下の写真は、私が水中ドローンを遠隔で操作している様子です。この日は風が強く寒かったのですが、かじかむ手で操作をしつつも、右下の画像のように、思ったところに水中ドローンを操作でき、カキの映像を捉えることができました。


●5Gを使うことでWiFi到達距離を拡張した


 詳細について、もう少しお話しします。従来、水中ドローンはWiFiでの操作が多いのです。水中ドローンがWiFi端末の小さな機器に有線でつながっており、これが無線でスマートフォン側につながるというものです。スマホ側はWiFiの基地局として動作をするのですが、これでお互いに...
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