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水中ドローン映像で確認できるカキ養殖への5G利活用現場

Beyond5G・6Gで進む情報通信の民主化(6)カキ養殖における5Gの利活用

中尾彰宏
東京大学大学院情報学環 教授
情報・テキスト
ローカル5Gとキャリア5Gを整備するための実験場所として、日本のカキ(牡蠣)生産第1位の広島県でも有数の生産量を誇る江田島市の漁場を選定。実際にどのようなことが行われているのか。水中ドローンの映像を見ながら確認しよう。(全9話中第6話)
時間:07:24
収録日:2021/01/27
追加日:2021/04/20
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≪全文≫

●カキ養殖における実験の様子を確認


 実際の場所は広島県江田島市で、県レベルでも広島県のカキ(牡蠣)生産は1位なのですが、市レベルでも江田島市のカキ生産は1位、2位を争っています。こういった非常にカキ養殖で有名な漁場を選定しています。

 こちらに5G、あるいはローカル5Gを設定するにあたり、実験許可免許をこのように「能美ロッジ」と呼ばれている建物に設置をしました。ここは、カキの漁場から非常に近い場所となります。実をいいますと、この能美ロッジはこれから取り壊される予定になっていますが、この場所には今後ホテルなどの施設が建設予定となっています。ですので、将来的にはこの場所からローカル5Gの基地局を整備したり、キャリア5Gインフラが整備されることが期待されています。実験場所としては非常に良い場所を選定しています。

 実際にわれわれが構築したローカル5Gのソフトウェア基地局ですが、このように能美ロッジ上にアンテナが設置されています。

 そして、実際にわれわれのスタッフがボートに乗って、電波状況を調査している様子がスライドの写真では見られると思います。

 このように、船上に載せた端末、測定器で電波を発射したり受信したりするのですが、電波測定中の船とアンテナの距離をいろいろと変えることによって、ローカル5Gが水中ドローンの映像の十分な帯域の通信が行えるかどうかの確認をしていきます。


●水中ドローンで撮った映像を確認


 こちらは2019年度、ミリ波を使ったキャリア5Gの実験で撮った映像となります。水中ドローンはこの時からかなり進化をしていまして、これはまだ水中ドローンがそんなに成熟していない技術で構成されていたために操作性がそこまで良いとは言えないのですが、スライドのような映像が撮れていました。

 2020年度バージョンの水中ドローンを使いますと、かなり洗練された制御をすることができ、特に水中を垂直に潜ったり、移動も非常にスムーズに行うことができます。左側にうっすらカキの垂下連が見えますが、このように垂下連に非常に安定した状態で近づいて、その観測をすることが可能となっています。

 実はこれは水中ドローンを二つ動作させていまして、一つの水中ドローンからモニタリングをしている水中ドローンを見ているという状況となります。水中で電波を伝搬させることはできませんので、有線で水中の様子を映像として伝送し、船上から先ほどの能美ロッジへ5Gの電波を使って映像を伝送するということを行っています。

 実はこの実験は今、ちょうどやっている最中となりますので、こちらはまだ録画映像であり、5Gを伝送した状態ではありませんが、今後こうした5Gの伝送によってこのような映像が遠隔地に届けられることになります。


●水中ドローンは海中だけではなく海底の状況も調査できる


 それではもう一つ、カキのモニタリング専用の水中ドローンから映した異なる映像を実際に見てみたいと思います。

 このように、2020年度の実験と比べますと非常に高精細な映像が安定的に撮れていることが分かると思います。われわれもこの映像を見るまで分からなかったのですが、前回の実験では分からなかったような細かい粒が見えます。おそらくこれはいろいろな浮遊物であると思われます。こうしたものがかなり正確に観測できることが分かると思います。また、カキのいろいろな付着物の色とか、どのような状態であるかというものがより高精細に観測ができるようになっているといえます。

 操作性もかなり安定しており、5Gの低遅延通信を使って、このようなカキの細部の状況を確認することが可能となります。水中ドローンそのものはどんどん進化をしている状況で、録画は4Kの映像になりますが、フルHDの映像が伝送できます。

 このように、水中ドローンは海中の状況だけではなく、海底の状況も調査することができます。今回は紹介できませんが、映像としては海底の堆積物であったり、海底がどのような状況になっているかということも併せて調査をすることが可能となっています。


●水中ドローンが3機同時に接続、多地点から観測できる


 それでは実際のネットワークトポロジーについて紹介をします。ソフトウェア基地局でローカル5GのSA(Sub6;4.75GHz)を使...
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