戦時徴用船の悲劇と大洋丸捜索
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
水中映像と写真や図面を照合し、沈没船を大洋丸と特定!
戦時徴用船の悲劇と大洋丸捜索(4)大洋丸の発見
浦環(東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役)
浦環氏のチームの大洋丸探索は、船の図面や残された写真から得られたものと酷似した構造の沈没船を発見し、大洋丸であることを特定していった。実は、今回確認で用いられた図面は、日本ではなくドイツに所蔵されていたものであった。こうした歴史的建造物に関する情報が適切に保管されていないことは極めて遺憾だと浦氏は吐露する。(全8話中第4話)
時間:9分32秒
収録日:2020年2月28日
追加日:2021年4月17日
≪全文≫

●資料館のデータからどの船が近海に沈んでいる可能性が高いか推測する


 この付近には沈んでいる船について見てみましょう。これは先ほどお話しした「戦没した船と海員の資料館」のウェブページに掲載されているデータです。これによると、緯度経度が描かれています。この星印は、海上保安庁からいただいたデータ上の、何かが沈没している地点を指しています。

 この資料館はさまざまなデータを分析して、沈んでいるものの種類や位置を示した地図を描いています。それぞれがどこまで正しいかはよくわかりません。なぜなら、情報が乏しいために推定しているデータ、たとえばアメリカが沈没させた船に関して、アメリカ側のデータからこの位置で沈没したのではないかというデータもあるからです。ともかく、このような地図が作成されているわけです。

 これに基づくと、字が間違っていますが大洋丸、りま丸、富生丸、錫蘭丸が、海上保安庁のデータから存在がわかった沈没船ではないかと思ったわけです。われわれは大洋丸の名前は知っていましたが、りま丸や富生丸、錫蘭丸に関しては、今までまったく聞いたことがありませんでした。そのため、この機会にかなり勉強したのですが、またあとでそのことについては詳しく説明します。


●実際に発見された沈没船は大洋丸であるという証拠が得られた


 最初はとにかく大洋丸だと思われる地点に行って、その周りをROVで調査しました。実際に大洋丸そのものでした。

 大洋丸は前のほうに魚雷を受けた結果、そこに積んでいたカーバイドが燃えて前のほうが潰れ、沈没したといわれています。実際、そのとおりの状況でした。

 潜ってみると、この黄色い線よりも前の部分は破壊されていて、形状をとどめていません。対して、後ろの部分はほぼ完全に原形をとどめていて、右舷を上にして沈没していますね。つまり、左舷を下にして沈没していることがわかりました。

 この後ろの部分の画像をお見せします。これが船尾側面ですね。ここがAデッキ、ここがプロムナードデッキ、A甲板、B甲板の写真です。

 こちらを見てください。まずB甲板の部分、A甲板の部分、それからここに1本、2本、3本柱が立っていて、4本目のところがこのB甲板に連なっています。開口部になって...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
都市木造の可能性~木造ビルへの挑戦(1)木造建築の歴史と現在
伝統木造建築はいま都市で必要な建物ではない
腰原幹雄
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
『「甘え」の構造』と現代日本(2)日本人の自責意識と自由の限界
「Thank you」か「I am sorry」か…日本人の癖とは?
與那覇潤
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生