戦時徴用船の悲劇と大洋丸捜索
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沈没船の戦いの歴史をひも解く
戦時徴用船の悲劇と大洋丸捜索(5)他の沈没船とその関係
浦環(東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役)
大洋丸の探索は成功に終わった。しかし、その他の沈没船は何だったのか。歴史を振り返ると、残りの4つの沈没船に関しても推測できることがわかった。日本とアメリカの船がお互いに攻撃し合って、何隻も沈没していったのである。浦環氏は、日米の船の沈没の歴史についてそれぞれの関係を明らかにしていく。さまざまな船や乗組員の運命が交差し、長崎沖で沈没船が残っている事実は、われわれの心に戦時中の日本を思い起こさせる。(全8話中第5話)
時間:6分32秒
収録日:2020年2月28日
追加日:2021年6月5日
≪全文≫

●近海に沈没している他の船に関しても推測する


 海上保安庁から情報を得た5つの物体について、大洋丸に関しては確証が得られました。それでは、あとの4つは何なのでしょうか。

 われわれは「KDDI Pacific Link」を用いて4日間の調査を予定していたので、残りの4つも調べました。われわれの期待としては、りま丸、富生丸、そして錫蘭丸に加えてあと残り1つと考えていました。

 こちらの地図でいうと、大5は大洋丸を指します。りま丸が沈没したのはここで、大4は海上保安庁からのデータですので、この近くを探索すると良いのではないかと考えました。そして、錫蘭丸の沈没地点はここです。Graybackという船もここに沈んでいるのではないかと思って、この辺りに描いてあります。豊浦丸はここです。それぞれの船は、やはり独自の歴史を持っています。

 この中で最も重要な船はりま丸です。りま丸は大洋丸と同じく日本郵船の船で、7,000トン規模です。陸軍の輸送船として用いられました。1944(昭和19)年2月7日、モタ02船団として陸軍部隊3,241人を乗せました。どのように乗せたのかわかりませんが、大変なものですね。香港に向けて門司(六連)を出発しました。しかし、2月8日に北緯31度05分東経127度37分の地点で雷撃を受けて沈没しました。輸送兵員2,700人を含む合計2,765人が戦死しました。戦時中の日本の被害としては、かなり多いほうです。これほど多くの人が亡くなりましたが、それほど話題にものぼりませんでした。

 この時期には敗戦濃厚になっています。先日NHKの番組を見ていたところ、最初は多くの人が亡くなって軍人たちは大変ショックを受けたが、戦争が進むにつれて何も感じなくなったというシーンがあって、私は唖然としましたね。りま丸についてはまたあとで詳しくお話ししたいと思います。

 富生丸に関しては、実はこれも日本の船ではなく、ヨーロッパで建造されたものです。また、錫蘭丸は日本の三菱長崎が建造しました。それからGraybackという船は、アメリカのものでした。

 さらにもう1つ可能性のある豊浦丸に関しては、きちんとした写真がありません。こちらは、同系船であるといわれている別の船の模型で...

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