戦時徴用船の悲劇と大洋丸捜索
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戦時徴用船の悲劇と大洋丸捜索(3)大洋丸探索計画
浦環(東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役)
大洋丸は、戦時中に物資輸送船として徴用され、最終的に長崎沖で沈没することとなる。浦環氏のチームは、この大洋丸の探索のため、最新鋭の機器を準備し、リアルタイム配信の環境を整えるなど、非常に大掛かりな計画を遂行してきた。その結果として大洋丸は見事に発見され、その様子はインターネット上で配信された。(全8話中第3話)
時間:10分46秒
収録日:2020年2月28日
追加日:2021年4月10日
≪全文≫

●戦争中の大洋丸とその最期


 それが平和な時の大洋丸の活躍だったわけです。戦争が始まると、物資を運ぶためには多くの輸送船が必要となります。民間船から輸送に用いるために、戦時徴用船として軍が運航していました。この「企業戦士」については、『大洋丸誌』という本からの引用を書き出しました。この点は非常に重要です。

 「太平洋戦争勃発後、怒濤の勢いで進撃する日本軍。比島、仏印、馬来、蘭印と占領地域の拡大とともに、南方経済建設が急務となった。東條英機首相は、17年1月22日の予算委員会の席上、南方建設について、「まず、重要資源の需要を充足致しまして、当面の戦争遂行に遺憾なきを期しますとともに、併せて大東亜自給自足体制の基盤を確立するということを主張としているのであります」。東條英機の南方経済建設戦略で「経済戦士」が誕生したと説明した。……こうした南方占領地域の重要資源を、硝煙消えやらぬ現地で、いかに効率よく生産、集荷するかにかかっていたが、それを担当する実行部隊について、「かつて南方に経験を有し、挺身これある方々にお願いしたい」と鈴木禎一企画院総裁は、国会で答弁した」

 つまり「民間の人が国のために働きなさい」と発言したのです。

 「桜の季節を迎えると、陸軍の第一次南方建設部隊の派遣陣容が決定した。具体的には生産関係が拓務省、集荷関係が商工省によってそれぞれ組織された。関係会社は百社ちかくに及んだ。……各会社では、南方復員者を中心にして、派遣要員の人選が急いでおこなわれた。かくして、にわか“経済戦士”が誕生した。……千十人の専門技術者集団を乗せた大洋丸は5日19時30分、宇品を解纜した」。つまり、もやいを解いて出て行ったのです。

 そして、この地図のここの地点で沈没するというわけですね。ここが九州です。ここが五島列島、甑島、屋久島、種子島。戦艦大和はここに沈んでいます。これは40年前に発見されていますね。前々回お話しした伊58はここに沈んでいます。大洋丸はこの地点です。

 大洋丸がここで沈没した際に、先ほど言いましたように八田氏を含む何名かの遺体が、このように対馬海流に流されていきました。私は現在、五島列島の福江島に住んでいますが、この福江島の大瀬崎などの場所に多くの遺体が流れ着いたと聞いています。


●大洋...


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