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ローカル5Gとキャリア5Gの連携で進む一次産業への利活用

Beyond5G・6Gで進む情報通信の民主化(5)地域課題解決型のローカル5G

中尾彰宏
東京大学大学院情報学環 教授
情報・テキスト
ローカル5Gとキャリア5Gの連携により一次産業、特に漁業への利活用の実証事業が採択された2020年度。中でもカキ養殖においてローカル5Gの適用ができないかということで、多くの課題があがる中、課題解決に向けた取り組みが行われている。具体的にはどのようなことが行われているのか。今回は、地域課題解決型のローカル5Gの実現に向けた開発実証について解説する。(全9話中第5話)
時間:10:00
収録日:2021/01/27
追加日:2021/04/13
タグ:
≪全文≫

●ローカル5Gとキャリア5Gの連携による一次産業への利活用


 これまでは大学での実験を紹介しましたが、ここからは令和2年度の地域課題解決型のローカル5Gの実現に向けた開発実証についてお話をします。

 こちらは総務省の委託事業となります。課題解決のためにローカル5Gを使うユースケースを提案しました。これによって、ローカル5Gの特性の発揮、低遅延、多数同時接続、AI活用、ユーザー側の関与、ユーザー目線での実装、それから横展開、こうしたところが評価をされて課題が選定されています。

 われわれも大学、自治体、通信事業者、ベンダー、ユーザー企業を巻き込んだコンソーシアムを構築しまして、特に「Sub6」と呼ばれている4.6から4.9GHzのローカル5G、それから28.3から29.1GHzのミリ波帯を使うローカル5G。このユースケースとして、主に地域課題を解決できるユースケースをピックアップして提案をしています。

 これは2020年の講義でも紹介をしましたが、その当時、われわれは特にキャリア5Gのみで実験を行っていました。今回は、ローカル5Gとキャリア5Gの連携により一次産業、特に漁業への利活用の実証事業が採択されています。

 2020年も一次産業、それから漁業への利活用を実証実験で行いましたが、今回は特にカキ養殖においてローカル5Gの適用ができないかということで取り組みました。

 カキ養殖においては環境の変化、競合する付着生物、それから養殖場の環境の悪化、食害等、多くの課題があります。これに対して、特に水中における状況把握にロボット、水中ドローンを活用しまして、養殖場の高精細映像による状況の可視化、併せてセンサーによる環境データの取得が可能なシステムを提案しています。

 いろいろな課題と対策がスライドに示されていますので、詳しくはそちらを読んでもらえればと思います。簡単にいいますと、解決策として5G技術を活用して、水中ドローンを活用した高精細な映像の取得、低遅延を使ったドローンの制御、それからセンサーデータの取得によって海中の可視化と環境データの取得システムを導入します。

 5Gの導入効果については、大容量・低遅延の5G技術を活用することで水中ドローンで撮影した高精細映像の伝送、環境データのリアルタイム伝送によって効率性を向上するという活動をしています。

 実際はわれわれが構築したソフトウェアの基地局を持ち込みました。その実験免許を取得し、遠隔による海中状況の可視化をこれらのソフトウェア基地局を使った5G伝送によって行います。

 実際、全体構成はスライドのようになっておりますので、詳細はそちらを見ていただければと思います。


●ローカル5Gとキャリア5Gの共存可能性を検証する実験


 実際にどのような実験をしているかについて紹介をします。今回はローカル5Gを主に導入しますが、実を言いますと、われわれが使っている「4.75GHz」という周波数帯はキャリア5G、つまりNTTドコモの4.5GHz帯の周波数と隣接しています。ですので、ローカル5Gとキャリア5Gの共存可能性検証が必要となります。

 こちら(スライドの左上、アの画像)はカキ養殖の漁場です。たくさんのカキ筏が浮かんでいますが、この下にある海中を可視化するために5Gのエリアを構築しまして、いろいろな場所の電波状況を調査した上で、ローカル5Gとキャリア5Gが同居した場合にその共存の可能性を調べるといった実験をしています。実はその測定をまさにこの講義収録(2021年1月)と同時期に行っております。われわれの協力企業、それからあとで紹介しますが、スタッフが広島県の江田島市にあるカキ養殖場に行って、この実験を今、この瞬間に行っているということになります。

 ここでキャリア5Gとローカル5Gの連携について少し触れておきたいと思います。実を言いますと、このような地域において5Gの導入は非常に時間がかかると考えられています。ですので、われわれが予想している状況は、そのように人口がそれほど多くない地域へのキャリア5Gの導入時期が遅れる場合に、おそらくわれわれが整備するようなローカル5Gが先行して整備される可能性が高いということです。

 しかし、数年かかるかもしれませんが、キャリア5Gがこのエリアに構築された場合でも、先に整備されたローカル5Gとキャリア5Gが干渉してしまうことになっては良くないということで、キャリア5Gとローカル5Gがきちんと運用可能であり、また同じ地域課題を、例えば水中ドローンのユースケースをキャリア5Gでもローカル5Gでも利用可能にしておくということを先行...
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