国際地域研究へのいざない
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幕末・維新の歴史から学ぶ「人材の蓄積の重要性」
国際地域研究へのいざない(7)明治維新の評価と人材の蓄積
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
近代日本の人々はまさに一級の人材であり、その後の日本の発展に大きく貢献した。明治維新は日本の構造を大きく変えなかったとする歴史観に対して、島田晴雄氏は日本の幕末から維新にかけて生まれてきた人材たちは、現在の日本にも影響を与える偉大な功績を残してきたと強調する。コロナ後の日本を考えるうえでも、人材を蓄積していた幕末維新期の歴史に学ぶ重要性は、計り知れないほど大きい。(全8話中第7話)
時間:7分36秒
収録日:2020年4月7日
追加日:2020年12月26日
≪全文≫

●今日の日本につながる陸奥宗光と福澤諭吉の功績


 岡崎久彦氏の遠い縁戚にあたる、陸奥宗光という人がいます。この人は、紀州藩の俊才で、坂本龍馬などとも親交があったそうです。彼は、幕末に諸外国との間に結ばされた不平等条約を、十数年かけて全て平等条約に改正するという離れ業をやってのけました。

 彼は長く外交に携わっていて、日清戦争時にも病身でありながら軍師的な地位にいました。日清戦争で日本は勝利しましたが、その後間もなく三国干渉によって日清戦争で得た利権を返還するよう求められました。これに反発して、国際社会に訴えて戦おうという意見がありましたが、陸奥宗光は素直に受け入れるように進言しました。大規模な国際会議などが行われれば、また中国の狡猾な戦略にしてやられてしまうというのです。日本は結局この要求を受け入れたので、陸奥の進言が今日の日本につながる道筋をつくったともいえるでしょう。彼は紀州藩という徳川方の藩の出身だったため、あまり出世できず伊藤博文の外務大臣までしか至りませんでした。

 また、福澤諭吉もやはり巨大な人です。彼も九州の中津藩という小藩の出身です。懸命に勉強して、最初は幕府を支持して戦えといっていましたが、そのうち失望しました。そして、明治政府が成立しても、同じように失望しました。最終的に若者を教育する以外道はないと思い、100年先を見通して、慶應義塾を創設しました。現在の慶應義塾大学も、大変な影響力を持っています。このように、大変な人材が多く存在していたのです。

●さまざまな見方ができる明治維新の評価


 当時の日本、幕末・維新を対象とした地域研究から学ぶことは、ひと言でいえば、日本に大変な民族能力が蓄積していたということだと思います。

 維新の評価には、さまざまな見方があります。まず、官軍史観は、薩長は正しくて、薩長が日本を良い方向に導いたという考え方です。

 それに対して、占領軍史観、または東京裁判史観と呼ばれる見方があります。これは戦前の日本は革命を達成したというが、結局半封建的な国を残していて、見るべきものはまったくない、日本を民主化させたのは占領軍だというものです。これと同じ論法を用いているのが、左翼史観なのです。そのような史観は、いくらでもつくれるのでしょう。

 司馬遼太郎は、なぜか明治政府の中心にいて指導していた人は、ほとんど扱...

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