国際地域研究へのいざない
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イスラエルを理解するには苦難の歴史を遡る必要がある
国際地域研究へのいざない(2)苦難の歴史とイスラエル成功の原動力
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
紀元後、古代イスラエルがローマ帝国に滅ぼされてから、ユダヤ人は20世紀まで国を持たないまま、実に二千年近く放浪生活を余儀なくされてきた。19世紀にナショナリズムの高まりの中でユダヤ人差別が激化すると、イスラエル国家を求めるシオニズム運動が盛んになった。ナチスによる凄絶なホロコーストを乗り越えて1947年に独立を達成したイスラエルは、その苦難の歴史の中で知識に投資して道を切り拓く術を学んできた。こうした歴史が今日のハイテク分野でのイスラエルの成功につながっている。日本はイスラエルへの進出に関して世界に大きく遅れを取っているため、早急に関係を深めていく必要があるだろう。(全8話中第2話)
時間:11分20秒
収録日:2020年4月7日
追加日:2020年11月21日
≪全文≫

●古代から現代まで続くイスラエルの苦難の歴史


 さらに、古代イスラエルの歴史的な背景も、こうした認識を強化しています。古代イスラエルは、紀元前1000年前後から存在していましたが、紀元後にローマ軍によって完全に滅ぼされました。その結果、数百万人の人々が1900年間も流浪の旅を強いられることになるのです。彼らのことをディアスポラと呼びます。イスラエル人にとって、この1900年の歴史は、迫害、弾圧、殺人、差別の連続です。

 19世紀に入るとシオニズムという考え方が出てきます。パレスチナ、つまり現在のイスラエルがある場所は、シオンの丘と呼ばれ、古代にはミルクとハチミツが溢れたすばらしい地域といわれていました。そのシオンの丘に帰るというスローガンを掲げた運動をシオニズムといいます。この運動を指導した人が、テオドール・ヘルツル(Theodor Herzl)というオーストリアに暮らしていたユダヤ人です。イスラエルでは、主要な道路の脇には、彼の銅像が建っています。

 この人は、現地民族に溶け込めると思って、必死に勉強に取り組んでいました。しかし、ドレフュス事件が起こり、ユダヤ系のフランス軍兵士が疑いを掛けられた挙句、町中を引き回されて大きなスキャンダルとなりました。その顛末を見て、どれほど地域社会、国民社会に入ろうとしても、ユダヤ人だとして差別されてしまう。シオンの丘に帰ってユダヤ人の国を作る必要があると考えて、シオニズム運動を世界的に展開したのです。これはどちらかというと政治的な働き掛けで、故国を作ろうという動きです。

 もう一人は、実際に現代イスラエルを建国したダヴィド・ベン=グリオン(David Ben-Gulion)です。この人は、ポーランドで暮らしていました。ロシアなどと同じように、ポーランドでは、ユダヤ人差別によって虐殺が起きました。これから逃れて、イギリス支配下のイスラエルに密入国して、ほとんど雨の降らない乾ききったイスラエルでオレンジを育てて生計を立てながら、独立運動に従事していました。そして、イギリスが戦争で疲弊して国連に丸投げした契機を生かして、イスラエルは独立を達成しました。

 このようなさまざまな人々の苦労がありましたが、最も惨憺たる悲劇となったのが、ホロコーストと呼ばれるヒトラーが指揮したユダヤ人大虐殺です。第二次世界大戦の末期に激化しましたが、ナチスにつかまって殺されたユダ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓