イスラエルの現況と日本
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ユダヤ人の1900年ものディアスポラ…シオニズムの理由
イスラエルの現況と日本(4)古代以来の歴史的背景
政治と経済
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
イスラエルの歴史は、古代から苦難に満ちている。飢饉のためシオンの丘を離れ、エジプトに移住した民は奴隷労働の下、メサイア信仰と選民思想を練る。出エジプト後の第一神殿も束の間、バビロン捕囚が続く。再建された第二神殿はローマ軍により破壊。1900年に及ぶディアスポラの日々がここから続いていく。(全6話中第4話)
時間:12分09秒
収録日:2019年6月11日
追加日:2019年9月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●古代イスラエルで始まったメサイア信仰と選民思想


 前回まで戦後のイスラエルの難しさを説明しましたが、実をいうとこれは古代から続いていることです。イスラエルという国は非常に歴史の古い国で、紀元前千数百年前から「シオンの丘」と呼ばれる土地に住む人々がいました。ところが、飢饉か何かをきっかけに、彼らはエジプトに逃げていきます。エジプトは当時の最先進国で、強大な力を持つファラオが支配し、ピラミッドを造らせていました。逃げ込んでいったユダヤ人たちは、奴隷になってしまいます。

 奴隷労働に苦しめられたユダヤ人ですが、頭のいい人たちですから、きっと万物創造の神が自分たちを救ってくれるだろうということで考え出したのが「救世主(メサイア)」で、メサイア信仰の始まりになります。また、神が救ってくれるのは「私たちだけ」だろうという「選民思想」を持つようになります。その後、2000年間にわたって世界中から憎まれる一つの理由になったのがこの思想でしたが、これは民族性といえるのでしょう。

 長い時を経てエジプトを出、紅海をわたったイスラエル人ですが、巨人ゴリアテと戦ったダビデ王の息子であるソロモンが、エルサレムに第一神殿を造ります。その後、多くの民が強制移住させられる「バビロン捕囚」が100年ほど続いた後、帰ってきたヘロデ王が第二神殿を造ります。非常に立派な神殿だったと伝えられます。ところが、ローマ軍の徹底的な攻撃によって神殿は消えてしまい、土台の西の壁だけが残されました。今も皆がお詣りに行く「嘆きの壁」です。


●キリストへの原罪とマサダ要塞の悲劇


 ローマ帝国はもともと多神教でしたが、キリスト教の影響を受けていきます。その時に逆らったのはユダヤ人でした。

 ピラトという監督官が統治していた頃、二人の囚人が送り込まれます。一人は痩せて髭ぼうぼうの男、もう一人は泥棒でした。この二人のどちらを処刑すればいいのだとピラトが聞くと、ユダヤ人が「髭ぼうぼうの方だ」と言った。それがイエス・キリストでした。彼は十字架に架けられ、殺害されてしまいます。このことをキリスト教徒は許しません。「ユダヤ人がキリストを殺した」というのですが、もともとキリスト自身がユダヤ人です。ともあれ今でも許さない。ユダヤ人はそういう原罪を背負った存在です。

 エルサレムが焼かれ、第二神殿も粉々になってしまった時、...

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