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GDPは幸福の指標になり得るのか

社会はAIでいかに読み解けるのか(5)人間の幸福と経済学

対談 | 柳川範之松尾豊
概要・テキスト
人間の幸福や満足度について、どのように分析すればいいのか。例えばGDPは幸福の指標になり得るかどうかだが、それは目的や価値判断によって変わってくるので、難しい問題である。経済学では、もともと物々交換から始まった経済活動が市場経済へ移行し、「市場取引で満足度を測れるはずだ」という発想になったが、最近はシェアリングエコノミーなど物々交換的に経済を回す活動が行われている。これをどう考えればいいのだろうか。(全8話中第5話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:24
収録日:2020/03/03
追加日:2020/05/19
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≪全文≫

●「何が幸福か」について、どのように分析すればいいのか


―― 経済学で考えた場合に難しいのは、例えば人間の幸福をテーマにした場合だと思います。どうしたら幸福になるかを考える際、経済の上ではいくつかのパラメータを想定します。例えば、GDPが上がると寿命が伸びるため、GDPは幸福の指標になるのではないか、といった想定です。しかし、そのベースになる部分で、まず「何が幸福か」ということについて、どのように分析できるのかという問題があります。

 前回のお話でいえば、変わり得るものが関連します。例えば、ブームですが、タピオカやガンダムのプラモがブームであるといわれています。しかしこれらも、手に入るとすごく嬉しいのですが、ブームが収まると、今度はそれを得ても「まあまあ、美味しかったよね」「楽しかったよね」程度の効用になってしまうかもしれません。そうなると、タピオカを生産したらみんなが幸せになるというわけではありません。こうした移ろう部分と、本源的な人間の幸せの部分をどのように見極めることができるのでしょうか。

 経済学の場合であれば、要素をかなり絞り、GDPが上がるか下がるかという点に決め打ちしてきた部分があると思います。今後は、こうした問題をどのように分析していけるのでしょうか。


柳川 何を目的にするか、あるいは何を価値判断にするかということが変わっていくときに、それをどう考えるかという問題は、今まで話してきたこととは少し違った要因を考慮する必要がありそうです。もちろん、人の感情がどのように変わってきているのか、人はどういうときに何を望むか、ということ自体を経験やデータに基づいて分析していくことはできると思います。しかし、そのことと、ある人はなぜその行動を取るのかということを調べることは、分析という点では同じでも、違う話だと思います。

 それこそ、AIで何を分析するのかを考える必要があります。例えば囲碁であれば、「勝利する」という明確な目的があります。自動運転であれば、「ぶつからないようにする」、医療データであれば「病気の画像を見つける」というように、目的がある程度はっきりしています。だから、そうした目的に向かって、できるだけ精度を上げていくということになります。今、問題になっているのは本当に精度が上げられるかということですが、これまでは少なくともどうやって精度を上げ...
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