社会はAIでいかに読み解けるのか
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
多数パラメータ系の学習において重要になるのは発想の転換
社会はAIでいかに読み解けるのか(2)多数パラメータと理解
経済学がパラメータ(変数)をあらかじめ絞ってモデルを構築し、データに当てはめるのに対し、ディープラーニングは、データからたくさんのパラメータによるモデル構築を可能にする。それにより、現象の表現力は高まるが、それを人間が理解するには困難が生じる。(全8話中第2話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分57秒
収録日:2020年3月3日
追加日:2020年4月28日
≪全文≫

●経済学はパラメータをあらかじめ限定して理論を構築してきた


柳川 前回松尾先生が言われた点は、先ほどの経済学の分析でも、かなり重要です。「理論」として前回申しあげた話は、説明変数のパラメータをある程度、理論で最初から絞ったものです。これは自然科学でも、おそらくそうだったのだと思います。

 ある種の行動を説明したり規定したりする理由には、いくつかの可能性があります。例えば、我々が今日コーヒーを飲んだとします。その際、なぜコーヒーを飲んだのかについては、いろいろな可能性があります。例えば、喉が渇いていたか、その人が本質的に紅茶よりコーヒーが好きかどうかなどが、コーヒーを飲むことに大きく影響されるだろうと推測(guess)されます。そこで、これらをパラメータ化することで、コーヒーを飲むか飲まないかという現象が説明されるかどうかということを、その候補のパラメータについて調べます。

 しかし、影響する無限の可能性を全部入れると、とても計算やデータの分析はできません。砂漠のなかで宝石を探すに近いようなことにもなりかねません。そこである種、現実的な対応として、「こういうものが重要だろう」という候補を挙げて、そのパラメータに関してだけ、データを分析し、結果との相関を見るということをやってきました。


●AIによってデータから理論を構築することが可能になるかも


柳川 松尾さんが言ったような多数パラメータの話は、最初からある種の推測を追ってパラメータの候補を見てしまうと、場合によってはすごく大きな不十分性をもたらしてしまうということです。ディープラーニングでは、あまり制約をせずに、全てのパラメータを見ることによって、重要なパラメータを見つけ出すことができます。これは、より正確に相関関係を見つけ出すことにもつながります。

 さらに、結果から2つのパラメータに相関があるのかを虚心坦懐に見ることで、新しい理論をつくることができるかもしれません。もともとは、理論から実証、あるいは理論からデータを見るという流れだったのが、データからAIを通して理論を組み立てていくという流れになるということが、今、起きつつあるのかなと思います。


●表現力の高いモデルを理解するのは難しい


松尾 そうですね。例えば、がんの発症を分析するのに、いろいろなデータを使います。最近明らかになったのは、入れる特...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
レアメタルの光と影(1)イントロ
イノベーションがレアメタルをコモンメタルにする
岡部徹
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
納富信留
認知バイアス~その仕組みと可能性(2)創造のバイアス〈前編〉
創造の「4段階説」、ひらめきには準備が必要
鈴木宏昭
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部