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「情報の非対称性」からくる効果を最大化するために

社会はAIでいかに読み解けるのか(6)情報の非対称性

対談 | 柳川範之松尾豊
情報・テキスト
情報技術の発展によって、貨幣経済以前の物々交換の世界も可能になってきた。それは、物々交換の課題だった「欲求の二重の一致」問題がインターネットによって解消されるからである。その中で気になるのは、「情報の非対称性」といわれるものだ。そこでAIやITが、今まで分からなかった、いわば「資源の有効活用」を可能にして、儲けるチャンスを増やしている。(全8話中第6話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:24
収録日:2020/03/03
追加日:2020/05/26
キーワード:
≪全文≫
●「欲求の二重の一致」問題はインターネットが解消する

―― 昔は物々交換だったものがそのことに限界が来たので貨幣経済になっていったと思うのですが、今度は逆に、情報技術が向上したため、再び物々交換の世界も可能になってきたということですね。そのときにどのように価値を測っていけば良いのかということが、現在の課題になっていると思います。しかし、実際にそれを測ることができるという可能性はあるのでしょうか。非常に難しい問題だと思うのですが。

柳川 物々交換がうまくいかないというのは、経済学で「欲求の二重の一致」といわれている問題が理由になります。あるところに3人の人がいて(私たち3人で例えましょう)、それぞれ物を持っているとします。そこで取引を行い、ある二人が欲しい物をお互いに交換できれば良いのですが、私が欲しいのは松尾さんの持っている物で、松尾さんは私の持っている物ではなく川上さんが持っている物が欲しくて、川上さんは私が持っている物を欲しいという状況を想定してください。物々交換ではうまくいかないのですが、3人でグルっと回せばうまくいくわけです。

 そうするとどうすればいいかというと、まずはある一人にお金を渡し、そのお金で別の一人から物をもらって、という感じで進めれば、3人の取引がうまくいきます。これが、お金が必要になっている基本的な理由で、最初に出てくる話なのです。

 しかし実は、この話はお金を介さなくてもできます。例えば、3人が「自分はこれが欲しいんです」「これ、持ってます」とネット上でつぶやいて、「これの代わりにこれが欲しいんです」という情報を3人で共有すれば、「じゃあ、ぐるぐるっと回しましょう」と話が進み、取引が成立するのです。つまり、この「欲求の二重の一致」問題は、貨幣が役割を果たす重要な局面なのですが、これは言い換えると、情報が不足していて、情報をうまく使えないことから生じた問題です。ですから、先述したように行えば、貨幣を使わずに取引を実現することもできます。

 この話は結局、ある種の掛取引のようなもので、帳簿で「自分はこれをこう供出しました」と書き、「その代わりに何かください」とすればうまくいきます。極端にいうと、世の中の市場取引が、今のこの3人の世界を1億人、10億人にして、全員が全部の取引を「私はこの物を(ネットに)アップします。その代わり、これをください」という、巨大な帳簿取引になるとすれば、貨幣はいらなくなり、全部物々交換で済むということです。

松尾 税金はどうなるんですか。払わなくて良いということになるのでしょうか。

柳川 税金は、ある種物々交換の一部を国が持っていくということになります。

松尾 その場合、その算定がなかなか難しいですね。

柳川 算定は難しい。算定は、何かの基準で行わなければなりません。そのためには、算定基準となる基本の財を決めなければならないでしょう。評価基準のようなものです。しかし、評価基準が必要なことと、貨幣が現実に流通する必要があることとは、理論的にはまったく別です。


●「情報の非対称性」によって儲けが生まれるメカニズム

柳川 多くの経済理論モデルは、「貨幣取引が入っていない実物経済モデル」といわれており、今お話ししたように全部物々交換で起こることを想定しています。

 その代わり、基準になる単位は必要で、「ニューメレール」(価値基準財のこと)と呼ばれます。例えば、それは米でも構いません。米を1単位とすれば良いだけです。それぞれの製品を、パソコンは米20単位分、コーヒーは米0.5単位分というように、この単位に従って測ることができるようになります。経済学の理論モデルは、こうした単位を基準にして物々交換を行えば、世の中は回っていくということが想定されています。そして、この単位財を「貨幣」と呼びましょう、という申し合わせがあってつくられている理論モデルが、圧倒的に多いのです。

松尾 なるほど。

柳川 これは現実の単純化です。しかし、今お話したように全て掛取引、つまり帳簿で表されるような世界になっていけば、物々交換で回るのではないかと考えることができます。

松尾 そこで、例えば、非常に単純な構図を考えてみたいと思います。AさんとBさんがいて、Aさんの持っているものをBさんは高く買いたいというときに、AさんもBさんもお互いの存在のことを知らないとします。そこに両者を知っているCさんがくれば、介在し儲けることができますよね。

柳川 それはありますね。

松尾 経済学の中では、こうした情報を知らないことによる利益を、どのように表すのでしょうか。

柳川 これは、「情報の非対称性」といわれているものです。情報が知らない中で活動し、今のように儲けるということです。


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