行動経済学とマーケティング
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
同じ商品なのに…満足度に影響を与える「3つの価格」
行動経済学とマーケティング(5)取引効用理論と「3つの価格」
阿部誠(中央大学 大学院 戦略経営研究科 教授/東京大学名誉教授)
行動経済学で「取引効用理論」と呼ばれるものがある。取引をした際の全体的な効用(満足度)は当然、高ければ高いほうがいいというものだが、取引の満足度は「3つの価格」に影響されるという。はたして「3つの価格」とは何か。それらに影響を与える要因とともに解説する。(全6話中第5話)
時間:8分24秒
収録日:2024年4月8日
追加日:2024年7月4日
≪全文≫

●取引の効用に関係する「3つの価格」


 さて、3つ目のマーケティングのケーススタディということで、まずは次の状況を考えてみましょう。

 あなたは夏の暑い日、ビーチで寝ころんでいます。友達が「ビールを買ってこよう」と提案しました。この近辺でビールを買えるところがおしゃれなリゾートホテルのバーしかなかったとき、あなたはいくら払いますか。あるいは、ビールを買えるところが古びた食品雑貨店だった場合、あなたはいくら払いますか。

 おそらく多くの人は「おしゃれなリゾートホテルのバーでのほうが、古びた食品雑貨店よりも高い金額を払う」と答えると思います。

 これは何を示しているかということを、行動経済学では「取引効用理論」と呼ばれるもので説明できます。実はこれも、リチャード・セイラーの提案した理論になります。簡単に紹介しましょう。

 この理論に基づくと、効用あるいは取引の満足度は、「3つの価格」に影響されるといわれています。1つ目は「支払価格(p)」です。これは、実際に支払った価格によってその取引の満足度が変わってくる、たくさん支払えば満足度が下がる、ということです。

 2つ目の価格は「等価価格」と呼ばれるもので、英語では「value equivalent(ve)」と呼んだりします。これは、商品からもたらされる価値を金銭に換えたもの、と解釈できます。

 3つ目の価格は「内的参照価格(p*)」です。これは、消費者が製品価格の高低を判断するための基準価格です。内的(頭の中)にその基準価格が存在し、それは過去の経験や記憶などいろいろな知識から構築、形成されるものと考えられています。

 実際の取引の効用は、この3つの価格によって変わってくる。先ほど言ったように、支払価格は低ければ低いほど満足度は上がります。一方、等価価格(商品からもたらされる価値)は高ければ高いほど満足度は上がります。それから、内的参照価格(基準価格)も高ければ高いほど「高いものを買えたのだ」ということで満足度は上がる。こう考えられます。


●同じ商品を同じ価格で買っても、状況により満足度が異なる


 そして、この取引効用理論のいう「全体効用」は、2つの効用の和で構成されていると提案しています。1つ目が「...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(1)ビジネスのヒントは歴史にあり
歴史に教訓あり――東西の知恵を融合させた経営論を学ぶ
三谷宏治
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?
経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」
田口佳史
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
ハラスメント防止に向けた風土づくり(1)ハラスメントの概要
増え続けるハラスメント…その背景としての職場の特徴
青島未佳
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略
「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
島田晴雄
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦