行動経済学とマーケティング
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ギャンブルのマーケティング…あぶく銭効果とは何か
行動経済学とマーケティング(4)出費を左右する「心理的会計」
阿部誠(中央大学 大学院 戦略経営研究科 教授/東京大学名誉教授)
ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学・テイラー教授の提唱する「心理的会計(心理的勘定)」という理論がある。私たちは普段のお金の使い方について、頭の中に複数の口座を持ち、それぞれ価値観が異なるため、買う・買わないの判断が異なる、つまり購買の“ハードル”が異なるという。いったいどういうことなのか。今回は、この理論について具体例を挙げながら解説する。(全6話中第4話)
時間:11分14秒
収録日:2024年4月8日
追加日:2024年6月27日
≪全文≫

●私たちは頭の中に複数の口座を持つ


 さて、2つ目のケーススタディです。「心理的会計、あるいは心理的勘定(Mental Accounting)」と呼ばれる現象を紹介したいと思います。2017年、この理論を提案したシカゴ大学のリチャード・テイラー教授がノーベル経済学賞を受賞しています。

 まず、次のような身近な問題を考えてみましょう。「チケットを再購買しますか?」ということで、2つの状況を並べています。

 状況A:1万円のミュージカルのチケットを買って会場に行ったところ、チケットをなくしてしまったことに気づきました。このときにあなたは1万円を追加で払ってミュージカルのチケットを買いますか。

 状況B:ミュージカルを見るため会場でチケットを買おうとしたところ、ポケットの1万円を落としてしまったことに気づきました。まだ1万円を違うところに置いてあったのですが、それを使ってチケットを再購買しますか。

 この状況AとBで、どのくらいの人が再購買をするかを実際のアンケートで調査した結果、このようになりました。

 1つの調査によると、Aでは46パーセントの人がもう1回1万円払ってチケットを買い、Bでは88パーセント(Aの約2倍の確率)の人が再購買するという結果が出ました。

 このようなパターンは、毎回毎回異なった被験者たち(一般人・学生、ネットアンケート・紙のアンケート)で繰り返し観察されるというパターンがありました。

 これを説明したのが、リチャード・セイラーの「心理的会計」という理論になります。まず心理的会計とは何か。多くの人は1カ月の生活費を、住居費、食費、交通費、通信費、娯楽費などいろいろなカテゴリーに分けて配分し、それぞれの口座の中で必要なものを買うというやりくりをするというものです。これを、先ほどのミュージカルのチケットのケースに当てはめてみましょう。

 そうすると、状況Aの場合は、1万円でチケットを買って、それを落としてしまった。再購買するということは、今月、そのミュージカルのチケットに2万円、娯楽費として使ったという判断になります。

 一方、状況Bの場合は、1万円落とした。それには特にラベルは何も付いていなかった。もしかしたら、それは他の交通費や食費に使われる...

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