行動経済学とマーケティング
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
サブスク、年間購読、セット売り…仕組みで満足度を上げる
行動経済学とマーケティング(6)実際のビジネスで満足度を上げる方法
阿部誠(中央大学 大学院 戦略経営研究科 教授/東京大学名誉教授)
実際のビジネスにおいて、取引効用を増やすことによって総効用(満足度)を上げることができる。では取引効用を増やすためにはどうすればいいのだろうか。鍵となるのは、前回解説した「取引効用理論」を構成する要素である「内的参照価格」。最終話では、その内的参照価格を参照しながら、実際に取引効用を増やすための方法について具体的に解説する。(全6話中第6話)
時間:7分12秒
収録日:2024年4月8日
追加日:2024年7月11日
≪全文≫

●鍵は社会的公平性…需給が一致する価格は設定されない


 では、これが実際のビジネスでどのように関係しているのかについて、いくつかの具体例を紹介します。

 まず賢いマーケターは、需給が一致すると期待されるところに価格を設置しません。伝統的な経済学では、需要曲線と供給曲線があり、それが一致したところが均衡として価格に設定される。つまり「需給が一致するところが適切価格なのだ」という理論です。しかし、実際はそうではないということです。

 例えば、質問Q1を考えてみましょう。なぜ人気コンサートのチケットは高値で転売されるのに、実際のチケットを公式サイトで買うと、それよりも安いのか。

 例えば、(ある)有名人のコンサートチケットは、オークションサイトでは10万円、20万円で転売されている。でも、実際のチケットは2万円ほどで売られている。これは、10万円、20万円というあまりに高い価格で公式サイトが売ってしまうと、やはり「それはぼったくりだよね」ということで、社会的公平性(がない)、つまりファンの心を逆手にとってぼったくっている。あるいは、そういうことをすると、リピートで購買をしてくれるお客さんが減ってしまうということなのです。したがって、チケットは不足気味でも、あえて価格は安く設定していることが挙げられます。

 Q2の状況はどうでしょう。レストランで通常、お客さんがたくさん並んでいても、「需要のほうが供給よりも高いのだから値段を上げましょう」ということはしません。これもやはり社会的公平性(を考えて)、ぼったくりだと思われないようにお店が配慮している。あるいは、そういうことをしてしまうとリピートしてくれない、ということがあります。

 したがって、「取引効用理論」の取引の効用を考えると、ぼったくりや、需給が一致するような高い価格は公平性を考慮していないということで、実際のビジネスではそういった価格設定はされないということなのです。


●鍵は内的参照価格…取引の効用を上げるための方法


 では実際に、総(全体)効用は獲得効用と取引効用の和ということですが、取引効用を増やすことによって総効用を上げることができます。(それについて)どういうことが考えられるのか。2つほどあります。

 1つは、内的参照価格を高くする。つまり頭の中にある基準価...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男