財政再建のために何が必要か
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
財政問題が解決しない理由に「危機感の共有」の欠如がある
財政再建のために何が必要か(1)危機感を共有する
日本の財政は長年危機的状況のまま、再建への確かな手がかりをつかめずにいる。柳川範之氏は、ただ「危ない、大変だ」と思うのではなく、危機を具体的にイメージすることが重要だと言う。危機的状況とはどんな状態のことか。どんな負担が生じるのか。危機感を共有するためには、現在の状況と、将来可能性のある危機的状況を比較することが肝要だ。(全2話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:8分15秒
収録日:2020年8月19日
追加日:2020年11月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●財政問題はデータに基づいてきちっと議論をすることが必要


―― 財務省の香川俊介元財務次官が亡くなってから5年ほどたつわけですが、彼は、「このままいくと国が壊れてしまう。国が破産したら社会保障もクソもない。今ある介護も、全部壊れてしまう」と言っていました。だけど、そういうことは、壊れる日の前日まで誰も分からないので、だからそういうことを言い続けた。それは、自分のためじゃなくて、将来の日本人のために、です。これも「時点」という意味の視点が違うと思うんですが、ともかく財政再建ということを唱え続けたのです。

 だけど、少なくともこの7年間くらいの間に、財政再建という言葉は禁句みたいな感じになってしまいました。日本は国債を持っているから、お金はいくらでも出てくるという感じのロジックで来ている。貿易収支は黒字になったり赤字になったりしているけれども、投資収益は20兆円規模で黒字だと。だから2030年~40年くらいまでの間は大丈夫というイメージが強くなってしまいました。このあたりについて、先生のお考えをお聞かせ願えればと思います。

柳川 財政の問題は、すごく大事だと思うんですね。なので、しっかりとした財政構造をつくっていくというのが、将来世代にとって、当然ですけど安心感のある社会保障だとか、あるいは必要な公共支出などをやっていくための基盤になると思うんです。

 ただ、安定的な財政状況とはいったい何か。やはりこのことに関する共通理解が今、ずいぶんなくなってしまっている。ある意味で、財政赤字はとにかくどんどん出していても問題ないというような議論がだいぶ出てきている。そこは、財政がどういう状況になるとまずいのか、何が問題を引き起こすのか、あるいはどんな問題を引き起こすのか、ということをもう少しデータに基づいてきちっと議論をすることが必要かなと思うんです。

 結果論ですが、財政がもう危機的な状況でずっと来ているその一方では、そんな心配されたことは何も起きなかったということも事実です。それをもってすると、オオカミ少年といわれるようなことになっていたりもするわけですね。

 本当に危機のポイントはどこかにあるはずなので、それを考えると、「いつまでも危機が来ないから大丈夫なんだ」と考えてしまうのは、かなり短絡的な話だと思います。


●危機感はイメージしにくい、共有しにくい


柳川 ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二