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オークションはゲーム理論の世界にうまくフィットする

ビジネス・エコノミクス(3)ゲーム理論とオークション

伊藤元重
東京大学名誉教授
情報・テキスト
経済学を理解するための基本的なツールとして、今や欠かせないのが「ゲーム理論」である。その活用は経済学だけでなく、政治の世界や生物の分野など多岐に渡る。そこで今回は、オークションの具体例からゲーム理論について考える。実世界では、オークションにおける価格設定においてゲーム理論が用いられており、売り手と買い手がより柔軟に取引できるようになっている。(全5話中第3話)
時間:11:02
収録日:2021/12/09
追加日:2022/03/03
≪全文≫

●経済学の基本的ツールとしての「ゲーム理論」


 三つ目に、話題として提供したいのが「ゲーム理論」です。本(『ビジネス・エコノミクス』)の中でもゲーム理論について一つの章を割いて、ビジネス・エコノミクスの観点から説明しているので、是非読んでいただきたいと思います。

 また、ゲーム理論については申し上げるまでもないと思いますが、今学問の世界では非常に大きな潮流になっています。経済学を少し真面目に学ぼうと思うと、ゲーム理論なしには済まなくなってきています。つまり、ゲーム理論そのものが経済学を理解するためのいわば基本的なツールになりつつあるのです。

 もちろん、真剣に、真面目に経済学の中でゲーム理論を学ぼうとすると、それなりにテクニカルなことも学んでいただくことが要請されます。ゲーム理論が非常に重要だということはみんな分かってはいるのですが、敷居やハードルが高く、ゲーム理論を勉強するのはなかなか難しいと思います。そうはいっても、難しい数学やグラフを使わなくても、ゲーム理論のエッセンスを学んでもらうことは非常に重要です。『ビジネス・エコノミクス』の中でもできるだけ多くのビジネスの事例を使って、理論的な考え方を紹介しています。


●世の中の現象をゲーム理論的な視点から考えてみることが重要


 ゲーム理論は、別に経済学だけで使われているわけではありません。例えば北朝鮮のミサイルの開発と、それに対する日本、あるいはアメリカとの関係といった、まさに安全保障の戦略の議論をしようとするときにも、ゲーム理論的な考え方が非常に重要になってきます。ゲーム理論そのものがこうした軍事、安全保障分野の戦略的な議論の中からも発展を遂げてきた面があるので、そういった使い方もあります。

 それから、政治世界における選挙やいろいろな政策決定のプロセスなども、ゲーム理論的に分析することが当たり前に行われてきています。さらに生物の分野でも使われています。ご存じのように生物は、遺伝子が変異していろいろな形で進化していくものです。私は専門ではないのであまり詳しいことは申し上げられませんが、生物、いわゆるバイオロジーにも、ゲーム理論的な思考は非常に広く関わってきています。要するに、社会科学だけではなく、自然科学も含めて、この世のいろいろな現象をゲーム理論的な視点から考えてみることが非常に重要になってきています。

 法律、あるいは社会学などの社会現象でもそうですし、言語の分野でもそういう議論がずいぶんあると聞いています。そのため、大学生は1年の教養科目でいろいろなことを勉強しますが、これからの大学生は、政治や法律、あるいは経済を学ぶにしても、どの学部、学科に行くにしても、まずゲーム理論をきちんと学んでもらうことが重要だとある有名な経済学者は言っています。


●オークションをゲーム理論の世界から見たときのポイント


 もちろんこの本で扱っているように、ビジネス・エコノミクスに対応するようなビジネス理論の話も、ゲーム理論で見てみるといろいろなことが見えてきます。

 具体的な例はたくさんあるのですが、本に書いてあることをここでまた繰り返すことはしません。現実の経済を考えるときに、ゲーム理論的な発想がどう大きな影響力をもっているかの一つの例として、オークションを挙げてみたいと思います。

 オークションの一番分かりやすい例として、ある有名な画家が昔描いた絵が売りに出て、競りでそれに値段をつけていくとします。競り上げ方式でいくとすると、だんだん高い値段をつけていき、最後に一番高い値段をつけた人が、その絵を買い取る権利があります。こういう競りはいろいろなところで行われています。例えば、魚を卸す魚市場でも、同じように値を釣り上げて、一番高い値段をつけた人がそれを買う権利があります。

 これは、まさにゲーム理論の世界が当てはまります。例えば、その競りに参加する人が100人いるとして、それぞれがいくらの値段をつけるかを考えてみます。もちろん自分が商品であるその絵画をどれだけ評価しているかによりますが、自分よりも高い値段をつける人がいたら、その人に持っていかれてしまいます。逆に言えば、その人よりも高い値段をつけてあげれば買えます。つまりここでは、競りにどこまで参加していくかがすごく重要なポイントになります。

 ゲーム理論で大事なのは、それを分かった上で、競りをする人、つまり売る側が、どういう競りの仕掛けをしたらいいのかを考えることです。

 例えば、ファースト・ビットオークション(ファースト・プライス・オークション)は値を釣り上げていって、一番高い値段をつけた人に買う権利があるのですが、その彼は提示したお金を払わなければいけません。また、セカンド・ビットオークション(セカンド...
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