●経済学の基本的ツールとしての「ゲーム理論」
三つ目に、話題として提供したいのが「ゲーム理論」です。本(『ビジネス・エコノミクス』)の中でもゲーム理論について一つの章を割いて、ビジネス・エコノミクスの観点から説明しているので、是非読んでいただきたいと思います。
また、ゲーム理論については申し上げるまでもないと思いますが、今学問の世界では非常に大きな潮流になっています。経済学を少し真面目に学ぼうと思うと、ゲーム理論なしには済まなくなってきています。つまり、ゲーム理論そのものが経済学を理解するためのいわば基本的なツールになりつつあるのです。
もちろん、真剣に、真面目に経済学の中でゲーム理論を学ぼうとすると、それなりにテクニカルなことも学んでいただくことが要請されます。ゲーム理論が非常に重要だということはみんな分かってはいるのですが、敷居やハードルが高く、ゲーム理論を勉強するのはなかなか難しいと思います。そうはいっても、難しい数学やグラフを使わなくても、ゲーム理論のエッセンスを学んでもらうことは非常に重要です。『ビジネス・エコノミクス』の中でもできるだけ多くのビジネスの事例を使って、理論的な考え方を紹介しています。
●世の中の現象をゲーム理論的な視点から考えてみることが重要
ゲーム理論は、別に経済学だけで使われているわけではありません。例えば北朝鮮のミサイルの開発と、それに対する日本、あるいはアメリカとの関係といった、まさに安全保障の戦略の議論をしようとするときにも、ゲーム理論的な考え方が非常に重要になってきます。ゲーム理論そのものがこうした軍事、安全保障分野の戦略的な議論の中からも発展を遂げてきた面があるので、そういった使い方もあります。
それから、政治世界における選挙やいろいろな政策決定のプロセスなども、ゲーム理論的に分析することが当たり前に行われてきています。さらに生物の分野でも使われています。ご存じのように生物は、遺伝子が変異していろいろな形で進化していくものです。私は専門ではないのであまり詳しいことは申し上げられませんが、生物、いわゆるバイオロジーにも、ゲーム理論的な思考は非常に広く関わってきています。要するに、社会科学だけではなく、自然科学も含めて、この世のいろいろな現象をゲーム理論的な視点から考えてみることが非常に重要になって...