『「甘え」の構造』と現代日本
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「Thank you」か「I am sorry」か…日本人の癖とは?
『「甘え」の構造』と現代日本(2)日本人の自責意識と自由の限界
感謝の言葉として「Thank you」ではなく「I am sorry」と言ってしまう日本人の話が、『「甘え」の構造』に出てくる。そこから著者・土居健郎氏は日本人の本質、「甘え」の背景に迫ろうとしたが、與那覇氏はその分析にコロナ禍の日本人の行動を重ねることで、日本人の自責意識を指摘する。また、その指摘は、日本人の癖として西欧のキリスト教的価値観との対比によってより鮮明になっている。考察を深めると、キリスト教的発想、自由の限界への気づきを通じて、特殊と思われていた日本人の本質、あるいは日本文化の普遍性が見えてくる。(全7話中第2話)
時間:13分38秒
収録日:2023年3月13日
追加日:2023年6月3日
≪全文≫

●「Thank you」ではなく「I am sorry」と言ってしまう日本人の謎


 さて、そのような観点で再読することができるこの『「甘え」の構造』なのですが、再読するきっかけとして、土居健郎さんは、なぜ自分が甘えに注目したかというエピソードをいっぱい並べていくのですが、また別のエピソードに注目してみようと思います。

 本書の16ページにありますが、どうも1950年くらいなので、敗戦後数年くらいのときに、土居さんはアメリカに留学のような形で渡米するのです。そこで、我々が今もけっこうやりがちだと思うのですが、感謝を相手に示したかったので「Thank you」と言わなければいけなかったときに、つい「I am sorry」と言ってしまいました。

 そうすると、相手のアメリカ人はポカンとしていたというのです。何がsorryなのだということです。たしかに、我々は、「ありがとうございます」と言うときに、代わりに「すみません」と言うことがけっこうあるわけです。例えば、エレベーターでボタン押して少し待ってくれる人がいたときに、「すみません」と言って降りるということはよくします。

 土居さんも別の箇所で書いていますが、逆に「ありがとう」は、我々には少し使いにくい語彙のようなところがあります。つまり、「ありがとう」と言うと、上司が部下にとか、親が子どもに、というような、目上の者が目下の人のちょっとした手伝いなどに対して「ありがとう」と言うような軽いニュアンスがあって、むしろ「すみません」とか「申し訳ありません」とか、「恐縮な次第でございます」と言ったほうが、本当に感謝していますという、より深い感謝の念を相手に伝える文化が日本人にはあるのです。

 しかし、そのノリで「I am sorry」と「Thank you」と言うべきときに言ってしまうと、「何がsorryなの? よく分からない」と外国人に反応されたというのです。

 なぜ我々は感謝するべきときになぜ謝罪するのかというときに、土居さんとしては、日本人のほうが欧米人よりも相手の内面を察する、思いやる、そういう情緒、文化を持っているのではないかと考えました。

 これには、日本人がお互いに甘えあって暮らしているという背景がありはしないかという方向に土居さんとしては考察を進めるのですが、私としては、少し修正が必要かなと思うのです。

 欧米人だからとい...

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