『「甘え」の構造』と現代日本
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
恩は返さなくても取り立ててもダメ…山本七平と遠慮の意味
『「甘え」の構造』と現代日本(4)人間関係の三重構造と「遠慮」の世界
お互いが今、何を考えているか。居心地の良い社会を築く上でそれを推し量ることができる状況をつくることが重要だが、それを可能にするのが「慣習」だという。そこで、与那覇氏は『「甘え」の構造』の後に発刊された山本七平氏の『日本教徒―その開祖と現代知識人』を取り上げ、ある慣習から日本人を基礎づけるモラルを読み解いていく。しかし、実際に相手の心を推し量ることは容易ではない。そこで土居健郎氏は、人間関係を三重構造として考えることで、心が読み解けない他人とも共生してきた日本人の姿を捉えようとした。その議論のキー概念であり、現代社会で失われつつある「遠慮」について考察する。(全7話中第4話)
時間:10分05秒
収録日:2023年3月13日
追加日:2023年6月17日
≪全文≫

●居心地の良い社会を築く「慣習」と山本七平の日本人論


 さて、こうして、夏目漱石の『坊っちゃん』に出てくる借金の返し方に見られる人間の条件というところで、土居健郎さんの『「甘え」の構造』を読み解いてきました。

 相手が今どんな気持ちであるかが自分は分かるという状況をつくることが、人と人が一緒の社会で暮らしていく上では大事なのですが、おそらく、そういった状況を可能にしやすくするのが、例えば慣習といったものだろうと思うのです。

 つまり、「だいたい、こういうときは、こういうように反応することになっていますよ」という慣習がしっかりして、みんながその慣習に従って暮らしていると、「あの人もきっとそれを期待しているよね。あの人も内面ではこう思っているよね」ということが人間には予想しやすくなるわけです。

 これが、慣習というものが社会を居心地の良い場所にする上で大事なポイントであろうと思うわけなのです。この点で、まさに借金の返し方に関して、土居さんの『「甘え」の構造』は1971年ですが、1970年代にデビューして大きく活躍した山本七平という評論家は非常に面白いことを言っております。

 『「甘え」の構造』のちょうど5年後の1976年に出た『日本教徒―その開祖と現代知識人』(角川書店)という山本の本は、彼が平家物語を分析しながら、日本人はこういうものの見方をする人なのではないかということを書いているのです。

 山本いわく、平家物語に描かれている日本人のモラルというのは、恩は返さなければならない。恩を受けて受けっぱなしではいけない。恩を返さない人というのはよくない人だ。しかし一方で、恩を施した側も向こうが返してくるのを待たなければならない。積極的に「お前は俺に恩があるだろう、恩を返せよ」というように取り立ててはいけない。恩を返さない人も悪い人だが、恩を取り立てるやつも同じくらい、あるいはそれ以上に悪いやつだ。「恩は返さないのもダメだし、取り立ててもダメだ」というのが日本人を基礎づけるモラルではないか、と山本七平は論じているのです。

 つまり、源平合戦でなぜ平清盛が敗れて、源頼朝は勝ったのかというと、清盛というのは取り立ててしまう人なのです。例えば、後白河法皇などに、「あなたが権力を握れたのは誰の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明
老子の神髄(1)「絶対自由の境地」を求めて
『老子』が求める「絶対自由の境地」とは?…そして創造長寿へ
田口佳史
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
「幸福とは何か」を考えてみよう(1)なぜ幸せになりたいのですか
「幸福」について語り合う「哲学カフェ」を再現
津崎良典
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(21)中西輝政先生:アメリカの本質
【10min解説】独立250年、アメリカの理念と本質とは?
テンミニッツ・アカデミー編集部
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(2)三大要素は「皇帝」「都市」「漢字」
中国皇帝の実像は都市ネットワークを握る「最大の資本家」だった
宮脇淳子
日本の財政の真実を検証する(2)なぜ財政危機は起きていないか
なぜ財政危機は起きていないのか…国債の金利のトリックを読み解く
宮本弘曉
アメリカの理念と本質(1)西洋文明の行き着いた先と三つの建国
アメリカの理念と本質とは?…まず「三つの建国」から原点に迫る
中西輝政
老子の神髄(4)生成化育と突破力
生成化育――「自ずと然り」のメッセージと「突破する力」の歓喜
田口佳史
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす(1)精神分析の概念とその起源
なぜ心の病にかかるのか?ラカンの精神分析とその起源
斎藤環