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「合意なきBREXIT」とは何なのか?

BREXITの経緯と課題(1)合意なきBREXITの悪夢

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
今、BREXIT(ブレグジット)をめぐる政治が佳境である。世界中がこの歴史的出来事について注目している。BREXITはどのような経緯を経てきたのか。論争しているポイントは何か。EU離脱するとなると、どのような問題が生じるのだろうか。今回はまず、BREXITを決定した国民投票がなぜ起きたかを考える。(全8話中第1話)
≪全文≫

●合意なきBREXITの悪夢


 今、BREXIT(ブレグジット)はどうなるかについて、世界の関心が集まり、世界中の皆さんが心配しています。BREXITが経済にマイナスということは分かり切っています。ヨーロッパ大陸で人・物・金・サービスの移動が自由でなくなるということは、経済に必ずマイナスになるからです。

 それは皆分かっていますが、現在不安があるのは次のようなことです。2018年11月25日に、イギリスがEU(European Union、欧州連合)からどのように出ていくのかについて、EUとの間で正式合意が成立したので、全てがうまくいけばそのままEU離脱へと進んでいくのですが、イギリスの議会がテリーザ・メイ首相にかなり反旗を翻していて、場合によると議会を通らないかもしれません。そうすると、全部ご破算になってしまい、「合意なきBREXIT」ということになります。つまり、EUとは合意していますが、本家本元であるイギリスの議会が合意していないということで、このまま漂流するか、最初から交渉をやり直すか、あるいは国民投票をやり直すか、大混乱なのです。

 さて、合意なきBREXITとは一体何なのか。イギリスは、これまでEUの加盟国として、投資・貿易・金融・雇用・運輸、あらゆる面でEUが持っている単一市場、それから関税同盟を活用して、関税は要らない・投資や雇用は自由・金融は国境を越えたライセンスが手に入る、としていたわけですが、これが、2019年3月末をもって合意なきBREXITになると、一挙に消滅してしまいます。イギリスは第三国の扱いになるので、そうすると、イギリスの国民、企業、イギリスを訪ねてくる人、イギリスで投資している人たちは、環境が大激変しますから、どのくらいのコスト、トラブルになるのか、見通しがつきません。これを「合意なきBREXITの悪夢」というわけです。


●EUとイギリスの間で2つの合意が成り立つ必要がある


 イギリスのEU離脱は2019年3月末と予定されていますが、それが秩序正しく実現するには、EUとイギリスの間で2つの合意が成り立つ必要があります。

 1つは離脱の条件。もう1つは、離脱した後にどういう通商関係を持つかという政治宣言です。その2つが成り立たなくてはいけません。それは、EUとの関係では基本的に、2018年11月25日に合意が成り立ったのです。

 ところが、イギリスが国内で承認しないとなると大変なことになります。このようなことをして...
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