どうなるイギリスのEU離脱問題
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イギリスのEU離脱で最大の問題となるのは何か?
どうなるイギリスのEU離脱問題
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
イギリスのEU離脱という歴史的な転換点まで、あと半年を切った。交渉は大詰めを迎えているものの、まだ不透明な部分があり、合意形成のないまま「2019年3月29日」を迎える「無秩序離脱」の可能性がまだある。BREXIT(ブレグジット)交渉の難しさはどこにあるのか。今後のシナリオとそのポイントを解説する。
時間:14分54秒
収録日:2018年11月1日
追加日:2018年12月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●迫る離脱期限、「無秩序離脱」の可能性も


 イギリスのEU離脱問題(BREXIT、ブレグジット)について、何度かここでお話ししていますが、今日はEU離脱交渉について、今後のシナリオはどうなるのかという点をお話ししたいと思います。

 2019年における世界の重要事項の一つが、イギリスのEU離脱問題です。期限は、通告から2年後となる2019年3月29日に決まっていますが、現在にいたるまでイギリスとEUの間では合意ができていません。2018年10月に完了するはずだった合意が成り立たず、12月まで延ばしている最中です。合意ができれば、離脱時期を1年ほど先送りすることはあり得るといわれていますが、スケジュール的には2019年3月末には合意がなされ、2020年末に移行が完了するとなっています。

 しかし、実はそう簡単にはいかない理由がたくさんあります。まず、合意ができない場合を考えてみましょう。今(2018年11月1日)の段階で合意はできていませんが、このまま時間が過ぎてしまうと、合意なき「無秩序離脱」になるといわれています。


●離脱交渉のカギを握る英国議会の承認


 このような事態が起きかねないのは、主としてイギリスの国内政治が理由です。難航しているのはイギリスとEU間の合意交渉だと一般には見られていますが、実はイギリス国内政治上の対立がなかなか厄介な問題なのです。

 イギリス政治には、伝統的に左派と右派が存在し、それぞれの党内にも左と右を抱えています。特に労働党などはかなり左寄りになっていて、党内の路線対立に悩んでいます。現在の予測では、労働党右派はテリーザ・メイ首相の合意案に乗ってくることもあり得るのではないかといわれ始めているぐらいです。一方、保守党の中の問題は左右の対立だけではありません。離脱派がかなり多く、さらに「強行離脱派」というグループが存在していることも挙げられます。

 こうした中、仮に12月までにEUとイギリスの間に合意ができたとしても、イギリス議会の承認が取れるのかどうかが非常に厄介な懸念材料として浮上しています。議会の承認がない限り「無秩序離脱」のリスクが増すわけで、イギリス国内の承認問題が一つのカギと考えられます。


●「いいとこ取り」や「手切れ金」より問題は国境線


 これまでも今も、いろいろな点が交渉の材料になってきました。基本的には、自由なEU...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎