BREXITの経緯と課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イギリスのEU離脱の3つの条件
BREXITの経緯と課題(3)保守党の敗北と離脱の条件
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
2017年3月にEUに離脱を通告したのち、メイ首相は総選挙に打って出た。しかし保守党は予想外の敗北を喫し、政治状況は困難になる。そんな中、EUとの交渉で離脱の条件は3つに絞られた。その内容とは。(全8話中第3話)
時間:10分44秒
収録日:2018年12月4日
追加日:2019年3月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●EUへの離脱通告と、総選挙での保守党の敗北


 そうこうするうちに、国民投票は一体、法的拘束力があるのかということで、訴える者が出てきました。イギリスは議会制民主主義ですから、国家の正式な決定は議会で決まるわけです。国民投票は本来、参考意見にすぎません。それで、訴訟を行ったのです。

 そうしたら、2016年10月13日に高等法院(高等裁判所)の審理が開催されてすぐ、11月3日に議会の承認が必要だとして原告側が勝ちました。メイ政権は直ちに上告をしました。ところが、最高裁では翌2017年になって上告が棄却され、国民投票は民主主義の原則として尊重される、ということになりました。つまり、法的な話ではなく、政治的に尊重されるという結論を出しているのです。それを受けて、同年3月29日に、リスボン条約50条というものがあるのですが、これでEUに入る、出るということができますので、EU本部に、離脱を正式に通告しました。離脱の期日は2年後の2019年3月29日です。党内ではしかし、依然として離脱派と残留派が対立して、政治は大変混乱しているのです。

 そこでメイ氏は、大いなる賭けに出ます。総選挙に打って出るのです。これは前回言いましたように、自分は総選挙を経ておらず、消去法で首相になったので、少し引け目を感じていたのでしょう。総選挙を経て首相になるということと、圧倒的多数を取ってEUに対する交渉力を高めることをもくろんだのです。実際、選挙の下馬評は、保守党が不評のジェレミー・コービン氏の率いる労働党に圧勝するという予測だったのですが、結果は予想外にも保守党の大敗で、メイ氏の賭けは完全に裏目に出たのです。

 どうしてそうなったのかについてはいろいろな分析がありますが、この選挙を動かしたのは若者の投票行動だったといわれています。労働党は、授業料無償化、福祉の増額、そしてあろうことか、鉄道の再国有化などということを唱えているのですが、とにかく若者におもねる政策をたくさん出したのです。それが勝因だという説もあります。私はむしろそうではなく、2016年6月の国民投票では、新聞を購読している人の中には残留派が多かったのですが、そうではない若者や国際感覚のある人は投票に行っておらず、それで負けた面があると思います。よって今回は、そんなことならばと誰もが、投票に行ったのです。その結果、メイ氏の強硬離脱には反対意見が多かった...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの
岡本浩
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓